〜Aug/1998 肩・腕・肘・胸郭Q&Aライブラリー |
ミルクホール [98年 8月 16日 (日) 21時 23分]
25歳、女。153cm、45kg、書店店員。
中学生の時に、左肩の鎖骨の内側のあたりにしこりがあるのに気付きました。疲れた時に鈍痛を感じ肩が凝るのでCTスキャンを撮ったところ、骨だとわかりました。
その後、整形外科でレントゲン検査を受けたところ、「普通の人は、一番上の肋骨が二番目の肋骨の内側に入っているところが、あなたの場合は左側の二番目の肋骨の上に一番目の肋骨が乗った形になっていて、それが神経を圧迫しているのでしょう。また、その肋骨がつっかえ棒のようになっているため背骨が曲がっています」と言われました。レントゲン写真を見せてくださったのですが、私にも曲がっているのがわかりました。肋骨の曲がりはそれほど重症ではないそうですが、「これは生まれつきのもので矯正は出来ない。将来は左腕がしびれたり、不自由になることもあるかもしれない」ということでした。
年を取るにしたがって悪くなるのではないかと思うのですが、もう一生治らないのでしょうか。なにか良い治療法があったら教えてください。
[tomos]
首から腕に行く神経と、心臓から腕に行く血管は、その途中で第一肋骨・鎖骨・首や胸の筋肉などから形作られたトンネルを通ります。「なで肩」の若い女性などではそのトンネルが狭く、そのトンネルのところで神経や血管が圧迫されたり引っ張られたりする症状が出現することがあります。この状態を、胸郭出口症候群と呼んでいます。肋骨や鎖骨、頸椎の形態異常のために神経や血管が圧迫されやすく胸郭出口症候群になることがあります。第1肋骨が大きい場合もこの形態異常にあたると考えられます。
ミルクホール様の症状がこの胸郭出口症候群にあたるかどうかは詳細な診察や精密検査をしないとわかりませんが、「肩こり」は胸郭出口症候群でなくても出現します。単なる「肩こり」でもそうですが胸郭出口症候群は手作業、キーボード操作などで症状が悪化することが多く、肩の周辺の筋肉が弱々しい「なで肩」の女性によく見られます。治療は、姿勢の改善、肩・首・背骨の筋力強化、レラクゼイション、症状が強いときは鎮痛剤などの服用・神経の注射などが行われています。胸郭出口症候群でこれらの保存的治療により良くならない場合は、第一肋骨を切除するなどの手術が行われる場合があります。
姿勢の改善、肩・首・背骨の筋力強化、レラクゼイションといってもどうやったらいいのかわかりにくいと思いますが、スポーツクラブ等でエアロビクスなどをするのが一番手っ取り早いと思います。音楽に合わせて体を動かすのは気持ちがいいです。そんな暇がないとおっしゃる方は、ダンベル体操もいいかもしれません。毎朝20分程度大きく手を振りながら早歩きでウォーキングをするのも効果的です。多少肋骨に異常があったり、レントゲンで背骨が少し曲がっていても日常生活に支障がなければいいわけですし、また加齢とともに症状が著明に悪化するとも思われません。あまりくよくよ考えずに、さあミルクホール様もエアロ、ウォーキングでいい汗を流しましょう。
(Aug/22/1998)
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N.I. [98年 8月 09日 (日) 17時 35分]
年齢35歳。性別、男。身長187cm、体重85kg。会社員。サッカ−。病気、過去・現在ともなし。
3年前にサッカ−の練習中転倒し左肘を骨折しました。町の病院で治療しギブスを約1カ月しましたが、リハビリ中に腫れがひどくなり痛みもあり別の病院で治療を受けたところ大学病院を紹介されました。
大学病院での診察結果は「リハビリ中におけるムリが原因で内出血し、その血液が軟骨になる」というイショセイコッカ(異所性骨化)であると診断されました(関節の隙間がない)。手術しましたが、現在では両手で洗顔出来ない状況です。
大学病院は現在通院していませんが、リハビリは現在も行っています。良きアドバイスをお願いします。
[tomos]
膝の内側側副靱帯の異所性石灰化(骨化)に関してすでに説明いたしましたので、その解説を参考にして下さい。
受傷後3年も経過しており、またどのような手術を受けられたのかが不明なので、気の利いたアドバイスはできそうもありませんが、まだ異所性石灰化が認められるのであれば、エチドロネート(商品名、ダイドロネル)の服用が有効かもしれません。
今でも洗顔ができないほどの肘の可動域制限(拘縮)があるそうですが(90度程度しか曲がらない?)、関節授動術といって関節の拘縮の原因となっているところを削る・延ばす・切るなどの操作を加えて、肘関節を110度程度曲がるようにする手術法もあります。受傷後3年も経過しリハビリもそろそろ限界でしょうから、もしこれ以上の治療を望まれるのならば、以前行かれた大学病院で「そういった手術が N.I. さまの肘にも可能かどうか」相談なさるといいでしょう。
(Aug/11/1998)
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MAYUMI [98年 8月 03日 (月) 16時 42分]
はじめまして。32才のLA在住の主婦です。(身長155cm,体重45kg)
実は、約1年前に毎日のように約1週間ゴルフをし、打った反動がきつかったのか肘を傷めました。当時はさほどきつくない状態で近くの医者にいきましたら、鎮痛の注射を肘に打ち、「冷やすように」と言われました。その後回復の兆しがあまりなく、ときどき痛くなる状態でしたが、最近になり肘にモノがあったたりすると極端に痛みが走るようになり、また肘に突起物のようなモノが出てきて、肘も45度以上まげれなくなりました。(痛みが走るため)
このため、専門医に診ていただきましたところ、レントゲンの結果「骨には以上なく、TENDER(すじ?)(正しくは TENDON=腱 by tomos)が切れている。また、突起しているものは、鎮痛剤により周辺の組織がへっ込み、突起物が出ているように見える」と診断されました。
治療としては、「手術し、2週間程度のリハビリが必要」といわれましたが、何分医者が英語であるため、手術内容、手術によるリスク、リハビリ内容等細かい部分がわかりにくく不安を感じております。
上記の部分についてどのようなものか、もし日本で手術等治療した場合の費用、またドクターに質問する際の注意事項等を教えて頂きたく宜しくお願い申し上げます。
[tomos]
ご相談の肘の痛みは「上腕骨外側上顆炎」(lateral epicondylitis of the humerus,humeral epicondylitis)といい、テニスをする人に多いことから「テニス肘」(tennis elbow)とも呼ばれています。日常診療でよく遭遇する疾患です。
肘の外側の上腕骨外側上顆(骨の出っ張り)(lateral epicondyle)といわれる部分の周囲に痛み(pain)を感じることから上腕骨外側上顆炎といい、多くの場合使いすぎ(over use)が原因です。傷むのはたいてい手首(wrist)を手の甲側(dorsal side)・親指側(radial side)に動かす筋肉(muscle)の上腕骨付着部(enthesis)周辺です。ヤカンやイスを持ち上げる、タオルを絞る、ドアのノブを回す、ビンの蓋を回すなどの動作で、肘〜前腕(forearm)の外側が痛みます。重症の場合は、痛くてコップも持てません。
保存的治療(conservative treatment)としては、まずは重いものを持つなどの痛みを生じる運動・動作を避けること、すなわち安静(rest)が原則です。テニス肘バンドという肘に巻くサポーターを装着したり、手首の装具(splint)を装着したりすることもあります。鎮痛剤の入った湿布・軟膏(ointment)の使用、肘の炎症部への局所麻酔剤等の注射(injention,block)なども行っています。テニス肘の予防には、当然ですが、上肢の筋力トレーニング(muscle exercise)・ストレッチング(stretching)が重要です。
難治性のテニス肘には手術的治療(operative treatment)も行われますが tomos は経験がありません。肘の部分で原因となっている腱(tendon)を切離(切り離すこと)(release)したり、手首の部分でその腱を延長(lengthening)したりすることがあるそうです。手術は通院で行え、日本で手術した場合、費用は手術・麻酔・検査・薬・通院費など総額で4〜7万円、健康保険の家族(3割負担)で自己負担が2万円前後だと予想されます。
テニス肘は力仕事やスポーツをしない主婦にも多く認められ、整形外科外来に大勢来院されます。家事や日常生活の作業により腕に使いすぎが生じているものと思われます。日頃からストレッチングや筋力トレーニングを行い、テニス肘にならないようにしましょう。
最後に、外国で言葉が上手く通じないときは予め英語で質問事項等をメモ書きしておいてドクターに見せるのがいいでしょう。わからない語句も辞書で調べれば、なんとか表現できると思います。日本人は英会話の苦手な人が多いですが、けっこう英語の読み書きはできるものです。
(Aug/9/1998)
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のっぽさん [98年 8月 03日 (月) 15時 30分]
一応ライブラリーとかみさせていただきました。質問事項が多々あるので、相談させていただきます。
こんにちわ。のっぽさんといいます。野球肩で困っています。やはり全力でプレイできないのは、ストレスがたまります。
性別:男
職業:会社員
年齢:31歳
野球歴ですが、18才まで野球漬けです。大学ではしませんでしたが、会社に入り野球を再開。そのときは全力で投げるのは問題なかったですが(痛いときもありましたが)、筋力トレーニングのベンチプレスで明らかに「すじ」が痛い症状はでていました。投げたときの痛みではなく、「痛い場所」がわかりました。腕と肩甲骨の間に通ってる「すじ」(そんなものあるかはしりませんが)が全体に痛いのではなく、一本の「すじ」で痛かったです。
そもそも、高校の時は痛くなったときでも投げてたら治ってたですが。(治ってるとの勘違い??)
で、現在の代表的な症状はこうです。
1.投球動作後に肩関節と肩甲骨の間が痛い。
2.きおつけの姿勢で手のひらを外にまわすと、肩にかかってる肩甲骨の奥(肩関節)が痛い。
3.力こぶを作る形で後ろにそらすと2と同じところが痛い。
です。
初めは肩ではなく、肩甲骨の腰に近いところ??がバキバキいいだしました。それから肩関節にきました。
なお、整骨院の針治療で、肩甲骨の柔らかいところ(背中)に針をすると症状は改善はされました。あと、最近は効かなくなりましたが、仰向けに寝た状態で、腰をひねり肩と膝を上から押すストレッチをすると痛みがなくなったこともありました。ある整体の方は「背骨の回転が悪いから肩に痛みがでる」といわれたので、このストレッチをしました。
質問ですが、
1.なぜ肩がいたいのか??
>>肩甲骨(背中)は痛みはないが、そこに針を打つと肩から腕まで痛みがはしる。一体どういう構造になっているのか??
2.治すには、絶対に手術がひつようなのでしょうか??
3.傷めているのは「すじ」なのでしょうか??靱帯なのでしょうか??
4.いためているのが「すじ」ならば、有効なストレッチはないのでしょうか??
5.MRIなどの設備がある病院をどうやってさがせばいいのでしょうか??また費用はいくらくらいかかるものなのでしょうか??
6.肩の筋力が上がると痛みは和らぐのでしょうか??
7.「すじ」や靱帯が切れていると、普通にしてても痛いはずであり、なぜ投球動作時のみ痛いのでしょうか?
8.「すじ」をいてめてるのか?それとも関節の袋をいためているのでしょうか??
9.注射をする際、「あらかじめの準備」とか「注射後の処置」ってどのようなものがあるのでしょうか??
以上です。
[tomos]
Q&Aライブラリーに野球肩の解説があります。ご質問の件についても4.5.6.9.以外は既に概略を説明しております。以下の説明も前掲の解説を理解されてからお読み下さい。
1.3.7.8.について
野球肩では、投球動作で「肩峰下滑液包や腱板」が「肩峰や靱帯からなるアーチの部分」に衝突したり、上腕二頭筋(力こぶの筋肉)の腱の変性(傷んで弱ること)を生じたり、上腕三頭筋(上腕の後ろ側の筋肉)の肩甲骨にくっついっている所に骨の棘(とげ)ができたりします。これらは、投球動作をすると衝突したり、引っ張られたり、はさまったりして痛みを生じます。日常生活には支障がないことがほとんどです。なお、申し訳ないですがハリに関しては、tomos は知識がほとんどありません。
2.について
tomos は治療経験がありませんが、場合によっては手術により出っ張ったところを削ったり、傷んだ所をトリミングしたりして症状が和らぐことがあるそうです。しかし、ひどい野球肩の場合は手術の施しようがない場合もあります。
4.6.について
野球肩の予防の筋肉トレーニングでよく行われるのは、肩を外側から挙上したり外側に回したり(捻ったりする)する筋肉の筋トレで、チューブを用いた方法が野球の解説書やスポーツ医学の本によく紹介されています。これは、肩を傷めて投球を休んでいる期間にも筋力の低下を防止する目的で行われているようです。
肩関節のストレッチングが野球肩の予防に効果的であるのは周知の通りです。このストレッチ法はポピュラーでもうご存じでしょうが、野球の解説書、ストレッチングの解説書、スポーツ医学の本に必ず紹介されています。
投げ過ぎ、悪い投球フォームは野球肩になりやすくします。ストレッチングや筋トレ、投球後のアイシングなどのケアが野球肩の予防には大切です。
5.について
医療機関の検索は当ページからもできます。お近くの中核的な病院を検索し、そこに問い合わせるといいでしょう。MRIの設備のない病院でも、近くのMRIのある病院に検査の依頼をしていますので問題はないかと思います。逆にMRIがある病院でも、専門医がいなくて肩のMRIの画像診断ができない病院もあります。野球肩の診察に行かれるなら、肩の専門医やスポーツ整形外科の専門医のいる病院に行かれるのが賢明です。MRI検査の費用ですが、健康保険の本人(2割負担)の場合数千円程度だと思います(1万円以上になることはありません)。
6.について
注射をするための特別な準備はありません。強いて言えば、注射をした当日は風呂に入れませんから、前もって入浴しておくのがいいでしょう(特に夏場は)。
投球動作は肩に過大な負担をかけます。そのため投球動作で肩を長期間にわたって酷使した場合は、投球に支障をきたすことになります。自動車の部品なら交換できますが、人の体は取りかえるわけにもいかず、結果的に野球を断念する選択を強いられることがよくあります。少年野球からプロ野球まで数え切れない選手が肩や肘を傷めて現役を引退しています。現役で活躍するプロ野球の投手は、卓越した強靱な肩を持った一握りの例外的存在といえるでしょう。
野球肩は日常生活には支障がなく、一般の方の場合、多くは手術の対象とはなりません。しかし、野球を続けたいという患者さまの強い希望がある場合は、手術で多少なりとも良くなる見込みがあれば手術をすることもあります。なお、手術では少なからず筋肉を傷めることになり、また手術後の安静によっても筋力が低下しますから、手術をすれば多少筋力が落ちるのはいたしかたありません。
(Aug/5/1998)
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肩脱臼男 [98年 7月 04日 (土) 17時 19分]
はじめまして。同じ様な質問になりますが、真剣に悩んでおります。宜しくお願いします。
<データー>
30才男性で職業は技術職です。(デスクワーク4割、ドライバー等の工具での軽微な作業7割)
スポーツは学生時代よりサッカーをしてます。
脱臼歴は下記通りです。
左肩:1回目 14年前ベッドで背伸びをした際、頭上にあった柵に引っかかり。
2回目 9年前背伸びをして後ろに肩を廻した際。
3回目 8年前サッカーで転倒。
4回目 4年前スキーで転倒。
5回目 先日 サッカーでタックルを受け、肩が廻った。
<質問>
1.脱臼後、2週間は完全固定してましたが、仕事の都合で固定を外し作業しました(精密部品の取付等で工具を使用した程度)。問題はないでしょうか? ちなみに現在痛みはありませんが、肩が重くあまり上まで上がりません。
2.当方の場合、習慣性でしょうか?その場合でも、3週間の固定が必要ですか?(何度も外れているので、固定しても同じ気がします。)
3.手術をした場合、痛みがありますか?
*後は、前の方のQ&Aが大変参考になりました。
お仕事でお忙しいかとは思いますが、宜しくお願いします。
[tomos]
習慣性(反復性)肩関節脱臼の Q&A はもうご覧になられたようですので、ご質問にだけお答えします。
1.関節が脱臼するときは関節の周囲の組織を傷めますから、それが落ち着くまで、約3週間は脱臼部の安静が必要です。2週間も3週間もあまり変わりがないようには思いますが、損傷された軟部組織の修復に要する期間は「3週間」というのが我々の常識です。
2.習慣性(反復性)です。この4年間は脱臼がなく、緩んでいてもそれなりに安定した関節だったわけですから、再脱臼したらやはり3週間固定した方がいいように思います。
3.手術中は全身麻酔をかけますからもちろん痛くありませんが、手術後も各種の鎮痛剤を使うため、痛みのコントロールが可能です。全くの無痛というわけにはいきませんが。
日常生活で「脱臼が怖くて腕を上げられない」という自覚症状が、手術をするかどうかのキーポイントです。スポーツで脱臼するだけなら、転倒したり衝突したりするスポーツをやめればいいと思います。(そう簡単にはやめられない?)
(Jul/5/1998)
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S.M [98年 6月 03日 (水) 9時 14分]
はじめまして。よろしくお願いします。
この1ヶ月の間に体の3カ所が立て続けに筋肉痛あるいは捻挫のような症状がでて、不思議に思っています。最初は5月3日頃に、朝突然左肩が痛み、10cm以上腕を上げられない状態になりました。地元総合病院の整形外科で診察してもらったところ、左肩関節の石灰化が原因と説明を受け、痛み止めの飲み薬と湿布薬をもらい、これらを服用・塗布することで3日後に痛みは取れました。
次に5月30日に背中の左中央部分が痛み出し、内臓疾患だと思い6月1日に前回行った総合病院の内科で診察してもらったところ、検尿、胸部レントゲン、心電図の結果、内科的には異常なしということで、当日、整形外科にも見てもらいました。そこでもレントゲン撮影を胸部を2枚、脊椎全体を1枚実施、診察結果、特に異常はないということで、前回服用した薬をもらいました。
それから背中の痛みは徐々になくなってきたのですが、6月2日に左足首がちょっと痛いなと思っていたら、今朝(6月3日)左足首が立って歩けないほど痛み出しました。鎮痛剤を服用し、安静時の痛みはなくなりましたが、現在歩くと激痛がはしります。
3つのケースとも特に激しい運動をしたとか、どこかにぶつけたということはありません。ただの、筋肉痛、捻挫なのでしょうか。他に原因が考えられれば教えてください。
[tomos]
(1)まず肩の症状は「石灰沈着性腱板炎」と考えられます。
肩関節は、上腕骨と肩甲骨が関節軟骨で接する面積が小さく、上腕骨の頭の部分は「腱板」と呼ばれる広いベルトでおおわれています。この腱板に使い痛み・老化等による炎症が生じると、この部分に「石灰」が沈着することがあります。これを石灰沈着性腱板炎といいます。整形外科外来に、これといって原因もなく「肩の激痛」を訴えて来院する患者の多くがこれです。治療は、まずは局所の安静、鎮痛剤等の投与などですが、石灰を注射器で吸引したり、石灰の部分にステロイドを注射したりすることがあります。石灰を吸引たりステロイドの注射をすると、劇的に症状が緩和することが多いです。
(2)次に、背中の左中央部分の痛みですが、私どもはこれを肩甲間部痛と呼んでいます。多くは「肩こり」の一種です。
(3)最後の足関節の症状ですが、これといった原因もなく足関節が腫れているそうなので、tomos は痛風を最も疑います。
電子メールでお伺いしたところ、お仕事は事務系で体重は標準体重を約15Kgオーバーされています。週に1回3Kmほどジョギングをされているようですが、それにより消費できるカロリーは約250カロリーで、およそショートケーキ1個分です。なんとなく生活習慣病的な感じがします。蜂窩(か)織炎も考えられなくはないですが、整形外科医が診察すれば、痛風か蜂窩(か)織炎かの区別ができると思います。また、12才〜18才まで剣道をされていたそうなので、足関節の衝突性外骨腫も考えられます。剣道では、左足はけっこう酷使しますから。
(Jun/6/1998)
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KOCHI [98年 5月 13日 (水) 11時 16分]
はじめまして、28歳♂男です。私は野球をしていますが、肘・肩についてお聞きしたいです。
今、ボ−ルを少ししか投げれません。肩を壊して無理に使ってきたからです。いまになって、また昔のように投げれればと思ってます。壊れてから7〜8年ですが、野球の方も続けています。肩に手を当てて肩を回すと、肩の前面で「ゴロゴロ」と骨のすり合わせる音がします。かなり重症とすれば、どうすれば昔のようにとはいいませんが、違和感なしで投げれるでしょうか?
それと肘ですが、小学生から今までやっていますので、かなり曲がってます。冬になると痛みます(日常で少し支障があります)。これなんかは、軟骨を切除した方がいいのしょうか?すいませんが、よろしくお願いします。
[tomos]
野球肩・野球肘に関するご相談です。
(1)野球肩
投球動作によって生じた肩関節の障害を野球肩といいます。症状は投球時(投球後)の肩の痛みです。
肩関節は骨同士が軟骨で接する「関節面」が小さく、腱板と呼ばれるベルトのような組織が上腕骨の頭の大部分を覆っています。腕を持ち上げて万歳の状態にすると、腱板は肩峰(肩甲骨の最外側)や靱帯からなる「アーチ」の下に潜り込む仕組みになっています。その「アーチ」と腱板の間には「肩峰下滑液包」(SAB)という潤滑液的なクッションのような組織もあります。
投球動作を繰り返すと、肩関節に緩みが生じ、腕でボールを加速するとき(acceleration phase)に腱板やSABが「アーチ」と衝突するようになりますがが、これが慢性的になるとSABの炎症、腱板や「アーチ」の変性(傷んで弱ること)などを生じます。野球肩には様々な病態がありますが、KOCHI様の肩はこのようになっているものと思われます。
症状が軽い場合は、安静や運動制限で痛みは軽減しますが、投球を再開するとまた再発することが多いようです。肩にヒアルロン酸
という潤滑液的な液を注射して症状を抑えることもあります。野球肩は日常生活には支障がないため、就職などで野球をやめてしまうと特に症状はなくなるようです。スポーツを続ける方で、投球時の症状を軽くしたい場合は、関節造影検査、MRI検査などをして悪い部位を診断し、「アーチ」を削るなどの手術をする場合があります。関節鏡で肩関節内を観察しながら、鏡視下に手術をする病院(大阪厚生年金病院など)もあります。
(2)野球肘
投球動作によって生じた肘関節の障害を野球肘といいます。
投球動作意時には、おおざっぱに言って、肘の内側には牽引力(引っ張られること)が、肘の外側には圧迫力が働きます。そのため、肘の内側には靱帯や筋肉の損傷・障害が、肘の外側には骨の損傷・遊離体などが生じやすくなります。また、肘の後方にも骨折や遊離体などを生じます。
その他、野球肘には様々な病態がありますが、電子メールで伺ったところでは、KOCHI様の場合は肘の外側に骨の病変を生じているようです。専門的には、「離断性骨軟骨炎」、「関節遊離体」と呼ばれるものだと思います。遊離体を摘出すれば症状は改善すると思われますが、
障害を生じてから長期間経過していますから、肘関節の可動域(曲げ伸ばしの範囲)はあまり改善しないかもしれません。
KOCHI様が、また投球ができるようになるかどうかは、専門医の診察を受けないとわからないでしょう。
(May/24/1998)
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A川 [98年 5月 08日 (金) 18時 37分]
27歳男性です。学生時代に競技スキー部に所属しておりまして、21歳のときに競技中転倒し、右肩を脱臼してしまいました。その時は病院で整復し、1ヶ月程度固定し、リハビリを行い順調に回復しました。
その後、25歳のときに走っている最中に転倒し、同じ箇所を脱臼しました。その後反復性に移行したようで、今までに8回脱臼しました。
3回目の脱臼で肩鎖関節も脱臼しているといわれましたが、これは初回の脱臼で起こったものです。(鎖骨が飛び出てるのは、初回の脱臼のときからおかしいなと思っていました。)
これからもスポーツを続けたいのですが、オーバースローでボールを投げると脱臼してしまうので手術を考えていますが、入院期間はどのくらいなのでしょうか? 仕事はデスクワークなのですが、勤務できるのは手術後どのくらいなのでしょうか? また、肩鎖関節の脱臼は手術するべきなのでしょうか?
以上、よろしくお願いします。
[tomos]
「Q&Aライブラリー」に習慣性(反復性)肩関節脱臼の説明があります。
入院期間は、抜糸までということであれば約10日間、腕が動かせるまでということであれば約3週間になります。また、仕事に関してですが、デスクワークであれば約1ヶ月で復帰できると思います。
肩鎖関節脱臼は、症状がなければ放置しておいても構わないでしょう。
(May/10/1998)
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さくら [98年 4月 29日 (水) 1時 08分]
はじめまして。ホームページを拝見させて頂き、いま私の気になっている症状についてご相談したく・・・書き込みをしています。
私はコンピュータ関連の仕事をしてます。1日中パソコンに向かっての仕事です。プログラマというわけではないのでキーボードを打つ量がそれほど多いとも(私個人の見解として)思っていません。但し、ブラインドタッチができないので多少手に負担がかかってるのでは?と思っています。
症状ですが、左肩から左手の先にかけてしびれる感じがたまにします。それも突然襲ってくるので、痛い時は手が上手く動きません。しばらくすれば治るのですが。最近ひんぱんにこの症状がおき、何もしていない時でも急にしびれたりします。一番重いと感じるのは肩付近です。後は肘・・手首といった感じです。
何とかこの症状を回避する方法はないでしょうか?アドバイスありましたらよろしくお願いいたします。
[tomos]
首や肩から腕や手にかけて痛み・凝り・痺れ等を生じる状態を、頸肩腕症候群と呼んでいます。頸肩腕症候群の中には、頸椎の疾患(例えば頸椎椎間板ヘルニア)、胸郭出口症候群なども含まれますが、一般的には手作業等による「肩こり」や「腕の痛み」を指します。
長時間のキーボード操作で生じるこのような症状は、典型的な頸肩腕症候群といえるでしょう。「肩こり」の解説で述べたように、頸肩腕症候群は、腕をダラッとさせ首が前屈みになった姿勢を長時間続けるのが原因です。
予防には、「首が前屈みになる姿勢」、「腕(肘)が浮いた作業姿勢」をできるだけ避けることです。具体的には、「ディスプレイの位置は目線よりやや下にする」、「キーボード操作する手は浮かさない」ことが重要です。最近人気のノート型パソコンは、長時間使用するのには不向きです。理想的な姿勢でも、同じ姿勢を長時間続けるのもよくありません。しょっちゅう姿勢を変えてみましょう。そして、30分に一度程度は席を立ち、腕や肩の体操をしましょう。運動不足(による筋力低下)や、精神的ストレスは頸肩腕症候群を助長します。適度に運動をして、リフレッシュしましょう。
(May/2/1998)
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どらえもん [98年 4月 25日 (土) 18時 48分]
右肩甲骨の内側の部分が痛いんです・・・理由がわからなくて困ってます。
最初は「寝違えたんだろう」と思ってほおっておいたのですが、2ヶ月も3ヶ月も続くうちに、心配になってきました。マッサージとかで治るものなのでしょうか・・・
どのような痛みかともうしますと、息を吸った時と背中を曲げたときが特に痛くて、肩こりと似たような痛みです。ひどいときは腕が上がらなくなったり・・・ちなみに肩こりもあります。
[tomos]
肩こりは、僧帽筋という筋肉に起こります。この筋肉は、上部は後頭部、外側は肩、下部は肩甲骨の内側まであり、その形状から僧帽筋と呼ばれています。肩こりは、この筋肉がつっぱる姿勢を長時間続けると生じます。なお、なで肩の人は肩こりが起こりやすくなります。
一般的には、肩こりは職業病として起こることが多く、事務作業・パソコンの操作・手作業・炊事・裁縫・編み物・読書・テレビ鑑賞・ゲームなど、腕をダラッとさせ首が前屈みになった姿勢を長時間続けると、生じやすくなります。運動不足(による筋力低下)や、精神的ストレスは肩こりを助長します。
肩こりは、まず予防が大事で、特に作業中の姿勢が重要になります。首が前屈みになる姿勢、腕(肘)が浮いた作業姿勢はよくありません。また、どんなに良い姿勢でも、同じ姿勢を長時間続けると肩が凝ります。しょっちゅう姿勢を変えてみましょう。そして、30分に一度程度は席を立ち、腕や肩の体操をしましょう。
運動不足も肩こりにはよくありません。ご自分のライフスタイルにあった運動を続けることが重要です。可能な人は週に2〜3回、スポーツジム等で汗を流すことをお勧めします。こういった施設にはインストラクターがいて、その人にあった安全な運動を指導してくださいます。朝の散歩も効果があります。隔日でいいですから、大きく手を振って早歩きで20分前後歩きましょう。
肥満も肩こりの原因になることがあります。おなかが出ていると、その代償として首が前屈みになりやすく、その結果肩こりが出やすくなります。肥満の解消・予防に努めましょう。
ときには肩こりは、脊椎の病気、肝臓・膵臓の病気、心臓や肺の病気などの一症状として生じることがあります。頑固な肩こりでお悩みの方は、一度、内科・整形外科等を受診した方がいいでしょう。
(Apr/29/1998)
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Gouto : 24歳[男] [98年 4月 19日 (日) 0時 13分]
はじめまして。ご相談したい内容は胸部についてです。
よく、鳩胸などとか耳にしますが、私の場合はその逆でして凹んでいるのです。丁度みぞおちの上でしょうか?とにかく中央部が変形しています。今までお医者様に尋ねてみたこともありますが、答えが返ってきたことはありませんでした。一時期流行ったという噂も聞いたことがあります。
この症状は何というのでしょうか?また手術により正常な形になるのでしょうか?生まれつきと諦めていましたが、もし可能であれば手術にかかる費用の目安などを教えてください。
とにかく、周りに私のような胸の形の方はいないので相談も出来なかったため、どこで聞いてみたらよいものか見当もつかず、こちらに思わず書き込みをしましたが、場違いな質問であったならばお詫び申し上げます。
よろしくお願いします。
[tomos]
患者様のような胸は「漏斗(ろうと)胸」と呼んでいます。胸部外科(主に心臓や肺を扱います)の領域になります。整形外科では扱っておりません。漏斗胸が重度で心臓や肺の機能に障害がある場合には、手術をすることがあります。手術では、凹んでいる胸骨という骨を裏返しにします。胸の中央に傷あとができます。
治療は健康保険が使えるため、一般の手術と何ら変わりありません。2割負担であれば200万円かかっても40万円、および食事の自己負担等です。1ヶ月に(食事の自己負担等以外に)6万3600円以上かかった分は、後で請求すれば健康保険から還付されます。つまり、1ヶ月あたりそれ以上の負担はかかりません。
(Apr/19/1998)
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F.J [98年 4月 1日 (金) 11時 30分]
質問です。脱臼が癖になり悩んでます。日ごろも痛むので・・手術しかないのでしょうか?4度抜けてます。
22歳 男です。よきアドバイスを!
[tomos]
外傷により肩関節が頻回に脱臼する状態を「外傷性再発性肩関節前方脱臼」(いわゆる習慣性肩関節脱臼)と呼びます。元横綱の「千代の冨士」がそれでした。また、腕を挙上したときに肩関節がはずれかかる場合を「肩関節前方亜脱臼障害」といいます。
関節は適合性(はまり具合)が重要です。特に肩関節は骨同士が軟骨で接する「関節面」が小さく、腱板と呼ばれるベルトのような組織が
上腕骨の頭の大部分を覆っています。脱臼したときに関節面の縁を傷めたり、関節のまわりの袋が傷んで緩くなったり、軟骨や腱板が傷ついたりなど関節が脱臼しやすい構造になることが多く、再脱臼しなくても「亜脱臼する」とか「痛み」や「動かすと音がする」などの症状が出ることがあります。
手術しない患者様も大勢いらっしゃいますが、肩を挙上(万歳をするかたち)しただけで脱臼し、手を挙げるのが怖くて日常生活に支障や不安があるようでしたら、手術に踏み切った方がいいと思います。脱臼しても、自分で脱臼を整復する患者様もいますが、脱臼する度に救急車で病院に運ばれる方もいらっしゃいます。脱臼を整復した後、安静のために3週間肩を固定しますが、脱臼する度に何度もそういうことになると、患者様にとってはそれも難儀でしょう。
千代の富士のように筋骨たくましい男性の場合は、筋肉を鍛えると筋肉がプロテクターになって脱臼しにくくなることもあります。しかし、一般の人がそこまで筋肉を鍛えることは、なかなかできないでしょう。手術法はたくさんありますが、基本的には、肩関節の前方を固めて脱臼しにくくするもので、成績も悪くありません。手術をすると多少肩関節の可動域が悪くなりますが、それも日常生活に困るほどではありません。手術後3ヶ月でスポーツ活動が可能です。激しいスポーツは手術後6ヶ月から可能です。
生命に関係のない疾患ですが、また、昔はこういった手術はなかったわけですが、医学の進歩で脱臼しにくく出来るようになったわけです。脱臼による日常生活の不便と、手術をするという体への侵襲を天秤にかけて、患者様自身が最終的にはご決断ください。
(Apr/3/1998)
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Ryo [98年 3月 13日 (金) 15時 01分]
はじめましてです!
早速ですが質問。「肋骨のひびは処置出来ないのでしょうか?」自然に任せて治すしかないと聞くのですが。答えを待っています。
[tomos]
肋骨のひび程度の骨折・数本までの肋骨骨折は、湿布を貼るぐらいで経過を見るだけで治ります。ただ、体を動かす時や呼吸や咳をする時に痛むようなら、さらしや腹巻きのようなバンドを胸部に巻いてやると痛みが和らぎます。たいてい1ヶ月もすれば痛みが軽減します。
しばしば肋骨骨折のために胸に血が貯まったり、肺がしぼんだりする場合があります。また、肋骨が多数にわたりボキボキに折れ、呼吸ができない場合があります。こういうケースでは、病院で(多くの場合入院が必要です)適切な治療が必要です。
(Mar/14/1998)
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toshizoh [98年 3月 10日 (火) 21時 37分]
初めてメールを差し上げます。よろしくお願い致します。
幼少の頃、2才年長の兄とふざけていてたころ右肩を脱臼しました。母親に連れられて整骨院に行き、はずれた肩をはめてもらい、その後はしばらく何も問題はありませんでした。
27〜8才頃、会社の野球大会に出ていてボールを遠投したところ再度右肩をはずしてしまいました。肩はブラブラしてボールを投げようとしても力のはいらない状態でしたが、痛みがなかったのと夕方で病院の受付時間が終了していたため、翌日受診しようと思い当日は病院へ行きませんでした。翌日になると肩が自然とはいっていて、痛みもなかったので結局病院での受診はしませんでしたが、数年して30才を過ぎた頃より右肩が非常に凝る様になりました。
現在では、
@右肩をまわすと、右肩胛骨の肺の後ろあたりがゴリゴリ大きな音がし、痛みがある。
A右肩胛骨の周囲の筋肉が非常に凝っている。
B右こめかみから右首筋、さらに右肩にかけてすごい凝りがあり、疲れたりしてくると右目の奥まで痛む。
C首をゆっくり回すと右側の凝った筋肉が「グキグキ」というか「バキバキ」という音がする。
等の症状に苦しんでいます。
一度病院で右腕付け根部分のMRI検査を受けましたが、先生のお話では「かなりの腫れが見受けられる」とのことで、抗不安剤を処方されました。
自分としては、前述のBの症状が非常に苦痛であり、右側頭部の凝りがひどいときには車の運転をするのも大儀な程で、頭髪も左側に比較して右側頭部はやや薄い感じになっています(自分では筋肉が異常に緊張していて血行が悪くなっているのではないかと思います。
31才の頃には右目の網膜剥離もおこして治療を受けていますが、こういった症状の間には何らかの因果関係はあるのでしょうか。また、こうした症状に病名はあり、有効な治療を受けることは可能でしょうか。あちこちの病院で診察を受けましたが、たいがいレントゲン撮影をして抗不安剤を処方されるだけです。本当に苦しくて、夜も良く眠れません。どうかよろしくお願いいたします。
[tomos]
外傷により肩関節が頻回に脱臼する状態を「外傷性再発性肩関節前方脱臼」(いわゆる習慣性肩関節脱臼)と呼びます。元横綱の「千代の冨士」がそれでした。toshizoh 様の場合は、27〜8才頃に再脱臼したそうですが、「痛みがなかった」ということで、おそらく「外傷性再発性肩関節前方脱臼」ではなく、腕を挙上したときに肩関節がはずれかかる「肩関節前方亜脱臼障害」にあたるのでしょう。完全に脱臼すると腕が動かせなくなり、また多くの人は我慢できない痛みのため病院を即刻受診されます。
関節は適合性(はまり具合)が重要です。toshizoh 様の場合、幼少時の脱臼で関節の縁を傷め、関節に緩みを生じているだと考えられます。特に肩関節は骨同士が軟骨で接する「関節面」が小さく、腱板と呼ばれるベルトのような組織が上腕骨の頭の大部分を覆っています。脱臼したときに関節面の縁を傷めたり、関節のまわりの袋が傷んで緩くなったり、軟骨や腱板が傷ついたりなど関節が脱臼しやすい構造になることが多く、再脱臼しなくても「亜脱臼する」とか「痛み」や「動かすと音がする」などの症状が出ることがあります。
「肩こり」やそれに伴う頭痛は、たいてい肩関節自体以外の原因で生じます。長時間の事務作業などの背中がつっぱる「姿勢」、首〜背中の筋肉の「筋力低下」、精神的な「ストレス」、頸椎疾患などさまざまな原因で肩こりを生じます。toshizoh 様のように肩関節の緩みや不適合性があれば、痛みや筋のアンバランスのため肩が凝っても不思議ではありません。ただ、肩こりは、姿勢やストレスなど職業病的な原因によることが多く、toshizoh 様の「肩のゆるみ」と「肩こり」との因果関係は、確定的とまでは言えないでしょう。
「右目の網膜剥離」や「右側頭部の頭髪の薄さ」と「肩のゆるみ」・「肩こり」との関係の有無はわかりません。
(Mar/14/1998)
toshizoh [98年 3月 14日 (土) 9時 45分]
ご多忙にもかかわらず、早速のお返事をいただきありがとうございました。
先生のご見解にもありましたが、私は現在事務系の職種についており、どうしてもパソコンやワープロといったデスクワークが中心になっております。また、小学校の高学年頃より近視のため眼鏡を使用しており、ひどい肩こり等についてはそのへんも影響しているのかもしれませんね。
会社への通勤も自家用車を使用しているため、自分でも運動不足は気になっておりましたが、しばらく休日などを利用して腕を大きくふりながら、家の近所などを散歩してみようかと思います。
また、なにかありましたらご相談させていただきたいと思います。本当にありがとうございました。
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ちか [98年 3月 09日 (月) 15時 03分]
私は胸郭出口症候群で、一昨年に両手の肋骨の半分を切除する手術を受けました。そして、昨年鎖骨の神経をとる手術を受けました。この病気の症状は、4年ぐらい前からあったのですが、どこの大学病院に行ってもわからないと投げ出されてしまい、一昨年にようやく権威のある病院の先生に助けられました。
今現在の症状は、両手の痺れと痛みが背中から腕にかけてあります。そしてこれはそれと関係あるのかはわかりませんが、腰の痛みがひどく歩くのも結構辛い状態なのですが、この病気と関係あるのでしょうか?この腰の痛みはもう既に3週間以上あります。お手数をおかけしますがご回答の程よろしくお願いします。
[tomos]
首から腕に行く神経と、心臓から腕に行く血管は、その途中で第一肋骨・鎖骨・首や胸の筋肉などから形作られたトンネルを通ります。「なで肩」の若い女性などではそのトンネルが狭く、そのトンネルのところで神経や血管が圧迫されたり引っ張られたりする症状が出現することがあります。この状態を、胸郭出口症候群と呼んでいます。
手作業、キーボード操作などで症状が悪化することが多く、肩の周辺の筋肉が弱々しい「なで肩」の女性によく見られます。治療は、姿勢の改善、肩・首・背骨の筋力強化、レラクゼイション、症状が強いときは鎮痛剤などの服用・神経の注射などが行われています。これらの保存的治療で良くならない場合は、第一肋骨を切除するなどの手術が行われる場合があります。
「なで肩」の女性は一般的に華奢(きゃしゃ)で、柳腰とよばれる体型が多く、姿勢・筋力不足の関係で腰痛も出現しやすいと思われます。治療・予防には、やはり姿勢の改善、筋力の増強が必要でしょう。具体的には、軽いスイミング・エアロビクスなどがお勧めです。毎日でなく週に2〜3回が疲労も蓄積せず、また継続できます。お近くのスポーツジム・フィットネスクラブに行きましょう。インストラクターが親切に指導してくださるはずです。また、隔日に20分以上、大きく腕を振ってウォーキングをされるのもいいでしょう。
(Mar/12/1998)
ちか [98年 3月 13日 (金) 15時 09分]
お返事有り難うございました。この間は、自分の紹介もせず失礼致しました。私は、25才の女性です。
この前相談した腰痛のことなのですが、この痛みは突如として現れるんです。前にも突然歩けなくなったり、背中が急に痛くなりベッドから起き上がれなくなったりということがあったんです。その時は不思議と一時的に手の痺れと痛みが薄らいでいるような気がしました。この病気というのは、悪化するとあちこちに痛みが移動するということがあるのでしょうか?
昨年までに、3個所(肋骨、鎖骨)を手術しているのですが、少しも楽になっていないような気がするのです。今の手の症状というのは、背中からの両手の痺れと痛みがあり、両手の指がまっすぐ伸びずむくんで熱を持っている状態です。特に右手に関しては、肘からむくんでいます。そして、今現在飲んでいる薬は、メチコバール、インフリー、ムコスタの3種類を服用しています。その前は、インフリーの代わりにロキソニンを服用していたのですがぜんぜん効かなかったんです。今は、インフリーを服用していますが、これもぜんぜん効かないのです。病院の先生に「薬を飲んでもぜんぜん効かないのですが」と言ったら「手術しか方法が無いのだけれど、様子を見たいのでとりあえず薬を服用しているように」と言われました。一応今年の夏頃に残りの左の鎖骨の神経を切除する手術をする予定なのですが、担当の先生はこの手術で本当に良くなるという保証が無いので迷っているようです。担当の先生には、「ここまで悪化しているので、手術をしても完全に治るということはない」と言われました。
話は変わりますが、私は趣味でテニススクールに週1回通っているのですが、これは手にとって良いことなのでしょうか?あまり手の調子が良くないと自分で判断したときは極力休むようにはしているのですが・・・どうかよろしくお願いします。
[tomos]
重力のある地球上を直立二足歩行する人類にとって、腰痛は宿命的なものです。ご存じのように背骨は横から見るとS字カーブを描き、力学的に強い構造になっています。しかし、24時間常に背骨をまっすぐにしているわけではないので、特別な背骨の病気がなくても、ふとした日常的な動作から予期せぬ腰痛に見舞われることがあります。俗に言う「ぎっくり腰」です。欧米では「魔女の一撃」と呼んでいます。
特に朝は要注意です。まだ体が寝ている状態なので、動作が鈍く腰をやってしまいます。布団やベッドから起きあがるときは危険です。朝目が覚めたら、できたらベッドのなかでしばらく様子をうかがい、ぱっちりと目が覚めてから、おもむろに起きあがるのがいいでしょう。洗面の時、腰を前にかがめますが、この時にギクッとくるケースも多いです。洗面の時は、少し膝を曲げ、背骨のS字カーブをくずさないようにして顔を洗いましょう。スクワットの姿勢です。
また、物を取ったり持ったりする動作で(特に重い物を持たなくても)、腰が前かがみになった時などに、よくぎっくり腰になります。物を持ち上げるときは、膝を曲げ、腰を落として、荷物は体の近くで、背骨はなるべくまっすぐにして持ち上げましょう。また、重い物を持ち上げるときは、できたら多人数で協力し合って持ち上げましょう。人は一人では生きていけません。
長時間座った姿勢(たとえそれがどんなに良い姿勢であっても)など、同じ姿勢を続けるのも腰にはよくありません。腰の筋肉が長時間つっぱった状態になります。また、座った状態では、腰の椎間板(背骨のクッション)にかかる圧力が、まっすぐ立った状態に比べて1.5倍かかると言われています。電車の中では乗客は競って座席に座ろうとしますが、立っている方がかえって腰への負担が少なく、また脚の筋力トレーニングにもなります。(しかし、やっぱり座った方が本が読みやすいし、だいいち居眠りできますね...)
以上は主に「姿勢」のことについて述べましたが、もう一つ、腰のまわりの筋肉、特に「腹筋」が大事です。腰を痛めた時、コルセットを腰のまわりに巻くと腰痛が楽になりますが、腹筋は生まれ持ったコルセットです。腹筋を鍛えましょう。腹筋を鍛えるというと、特別な体操を思い浮かべる方が多いと思いますが、座った状態でも、おなかに力を入れてやるだけで、これは立派な腹筋の体操(等尺運動)になります。これなら電車の中でもできます。(ただし、おならが出ないように気をつけましょう。)
人間は歩く動物です。二日に一度は早足で20分以上歩きましょう。特別なスポーツは興味や動機づけがなければ長続きせず、週に一度のスポーツは、しないよりはましですが、健康にはあまり寄与しません。一週間のうちに、向上した「体力」(持久力・瞬発力)が元に戻るからです。また、一週間に一度、体をスポーツ傷害の危険にさらすことになります。一週間に一度スポーツをしているからといって、健康に特別に良いことをしていると思わない方が賢明だと思います。
腰の椎間板は、20歳頃から「老化現象」をおこし始めますが、曲げられたり捻られたりするのに弱いと言われています。テニスはゴルフと同様、腰を曲げて捻る動作をしますが、腰痛をおこしやすい人や既におこしている人には不向きなように思われます。また、テニスは片腕だけを使うので、両側の胸郭出口症候群の患者様にとっては良いスポーツだとは思われません。(でも、スポーツをして汗を流すのは良いことです。もし興味を持ってテニスをなさっていらっしゃるのなら、どうぞお続けください。)
腰痛は、脊椎の病気だけでなく、ときには膵臓・肝臓等の内科の病気、尿管結石等の泌尿器科の病気、婦人科の病気などの一症状として現れることがあります。「腰痛」の気になる方は、医師の診察を受けておきましょう。
(Mar/16/1998)
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