〜Apr/1999 股関節・骨盤・大腿 Q&A ライブラリー |
k.m. [99年 3月 16日 (火) 2時 48分]
26歳・ 男性、173cm・62キロ、事務職です。
5年前、学生時代に武道の股関節の柔軟で人に体重をかけられ、主に左脚の内転筋群をひどく伸ばしました。可動域にはそれほど異常がないのですが、疼痛が慢性となり、椅子に座っているだけでも痛く仕事にさしつかえます。いくつかの整形外科で診察してもらったところMRIでも血腫等はなく、骨にも疾患は見つかりませんでした。
閉鎖神経を損傷して知覚過敏をおこしているということで、フェノールブロックまでするようになりました。フェノールで初めて効果が出ましたが、とてもデスクワークを1日こなすレベルまでにはなっていません。内転筋が付着する腱を中心に頑固な圧痛が膝裏近くまであります。本来やわらかいはずの筋肉が硬くなってなめらかに収縮しない、突っ張っている感じがいつもあります。
医学書で腱の延長や切除の手術があることを知りましたが、適応にならないようで、悩んでいます。多少歩行能力が落ちても痛みなく座っていられるようになりたいのです。「一度限界を超えて伸びた筋腱はもとの長さよりも短く収縮してそのままになってしまう」と聞きましたが、私のような場合 どのような手術や治療が残されているのでしょうか。よろしくお願いします。
[tomos]
内転筋群は太ももの内側にある筋肉の総称で、股関節を内転させる(開いた脚を閉じる)働きがあります。内転筋群は閉鎖神経という神経が神経支配しています。この閉鎖神経の一部は太ももの内側から膝にかけての知覚も部分的に支配しています。
閉鎖神経が損傷される原因は、1)股関節の前方脱臼などの外傷、2)人工股関節などの手術後、3)閉鎖神経が通過する閉鎖孔という穴への腹部内臓ヘルニア、4)分娩などです。「すもうの股割で閉鎖神経が損傷された」というのはポピュラーではありません。(tomos は聞いたことがありません)
【閉鎖神経ブロック】
神経ブロックとは、(部分的または完全に)神経の働きを薬剤等により(一時的または永続的に)遮断することを言います。
閉鎖神経ブロックは、閉鎖神経の炎症による大腿内側の痛み、脳性麻痺などの痙性麻痺(つっぱりを伴う麻痺)による内転筋拘縮(固まること)などに対して行われるブロックです。
また手術では、膀胱腫瘍等の経尿道的切除術のときに、「注入した生理的食塩水で充満された膀胱が閉鎖神経を刺激して手術中に脚が不用意に動かないように閉鎖神経をブロックする」ことがあります。
k.m. さんの場合ですが、(股割を含め)筋・腱の損傷は約3〜6週間で治ります。その後も太ももの内側の痛みが続き、閉鎖神経のフェノール・ブロックが有効だったとのことです。フェノール・ブロックは永続的ブロックの一種ですが、筋の攣縮(れんしゅく)に関与する細い神経だけを選択的に効かなくさせる作用があり、脳性麻痺(痙性麻痺)による内転筋拘縮の改善に時々実施されます。
閉鎖神経のような末梢神経が損傷されると弛緩性麻痺(筋肉がゆるむ麻痺)を起こし痙性麻痺(筋肉がつっぱる麻痺)を起こすことはありません。
k.m. さんの詳しい病態についてですが、MRI検査でも異常がなかったとのことですが、ネット上のやりとりだけでは今一よくわかりませんので、もう一度主治医とよくご相談下さい。お話のような状態では手術で治すという適応はないように思いますが。
内転筋のつっぱった状態の改善にはストレッチングが有効だと思われます。ただしストレッチング前には十分にウォーム・アップをし、またストレッチングは反動をつけずに痛くない範囲で20秒間以上行って下さい。
(Mar/31/1999)
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ゆき [99年 2月 18日 (木) 18時 29分]
33歳女性です。
一昨年秋頃から左股関節の痛みを感じ、昨年春に整形外科を受診し、「臼蓋形成不全」と診断されました。左のCE角は-10度で、既に骨盤には穴があき、軟骨にも亀裂が出来ていました。昨年6月に左のRAOの手術を受け、昨年秋より職場復帰(デスクワーク)しています。
しかし、手術前から右股関節にも痛みを感じるようになりました。右のCE角は15度で、「レントゲン上今のところ進行は見られていない」とのことですが、安静時にもしくしくとした痛みを感じます。また、プールで歩行した後に痛みが強くなります。
主治医に相談したところ、「今はまだ左脚がしっかりしていないので、右の手術はその後で考えた方がいい」とのことでした。右の痛みに関しては、「左をかばっているので負担がかかっているからだろう」との説明でした。耐えられない痛みではありませんが、足の付け根のあたりのしくしくとした痛みとももの前側のひりひりした痛みがあります。レントゲンで何もないにしては変だと思うのです。
手術を行った病院とは別な病院にて術前にMRIを撮った時に、「右股関節にも水が溜まっている」と言われましたが、やはり炎症があるのでしょうか?「軟骨の外側にひびが入り、そこから痛みが出ている可能性がある」とある本に書いてありましたが、もし、ひびが入っているのであれば、やはり将来的に進行するものと考えた方がよいのでしょうか?
ひびだけであれば、筋肉強化によって一生耐えうるのでしょうか?現在、杖は使用していませんが、階段の上りは左足にはまだつらいです。通勤は満員電車で1時間半くらいかかりつらいこともあります。筋肉強化はマシンジムと自転車、水中歩行を少々していますが、無理すると両足とも痛みだすという状況です。身長152cm体重42kgくらいなので、体重による負担はそれ程ないと(自分では)思っているのですが。。。
左股関節に関しては、手術をしてしまったので今後人工関節に至らないようにするためにはどうしたらよいかアドバイス戴けましたら幸いです。また、右股関節に関しては本当に病気が進行し始めているのか、手術はした方がよいのかどうか、教えて下さい。どうせ手術するのであれば若いうちに済ませておきたいです。何とぞよろしくお願い申し上げます。
[tomos]
ゆきさんは臼蓋形成不全のため昨年6月に左股関節の臼蓋回転骨切り術(RAO)を受けたとのお話です。
CE角とは、簡単に言うと、大腿骨頭の頂上から外側に臼蓋の屋根がどれくらいおおいかぶさっているかの指標になる角度です。大きいほど関節に無理がかからないことになります。正常では30度以上あります。ゆきさんの手術前の左側は−10度ということで、骨頭の頂上が臼蓋の屋根からはみ出ていたことになります。
右側はCE角が15度あり、レントゲン上もまだ変化がなく、無理をしなければこのまま手術をしなくてもいける場合があります。現在は左側の手術をしてまだ日が浅く、それをかばうために右側に負担がかかっている状態で、そのために右側の痛みがあるのだと考えられます。主治医の先生がおっしゃるように、左側がもう少ししっかりするまで様子を見た方がいいと思います。
MRI検査で「右股関節に水がたまっている」とのお話ですが、関節には元来関節液があり、その量の多い少ないは、MRIの機械の性能によってはなかなか判断しにくいことがあります。
現在杖は使っていないそうですが、杖は関節にかかる負担を大幅に軽減することができます。もうしばらく1本の松葉杖またはステッキを使うのも一つの方法です。
今後のことですが、股関節の疾患のある人は、まずは太らないようにするのが大事です。関節に負担がかかる仕事やスポーツもなるべくしない方がいいでしょう。現在していらっしゃる水中歩行等の運動は今後も続けて下さい。
(Feb/24/1999)
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MASHA
[98年 10月 17日 (土) 21時 15分]
tomos 先生はじめまして。28歳OL、身長166cm、体重58Kgです。
スポーツは学生の頃から大好きでいろいろ行ってきましたが、現在はスポーツクラブでエアロビクス、ジョギング、ウエイトトレーニング、スカッシュなどを週2〜3回のペースで行っています。
ご相談したいのは右股関節の痛みについてです。
本日スカッシュをしていてボールを追っていた時に右脚が滑り、右脚を思いっきり前に伸ばした形になりました。その瞬間右脚のふくらはぎから太ももの裏側に電気が走ったような感覚を覚えましたが、ふくらはぎおよびハムストリングスには現在痛みはありません。しかし、右股関節の外側が痛く右脚に荷重すると、痛みが走ります。
痛みの程度ですが特に右脚の外側に加重すると激痛になります。また階段を昇る、あぐらをかくなどの動作は痛くて行えません。動かさなければそれ程痛みませんが、受傷時より痛みは強くなっているような気がします。(受傷後6時間位経過)
現在は受傷部をアイシングしていますが、私は皮膚が弱く湿布でかぶれてしまうため湿布を貼ることができません。病院に行けばよいのかもしれませんが、場所が股関節ということでちょっとタメライを感じています。今後どのようにすればよいでしょうか?またこれは捻挫なのでしょうか?お忙しいところ大変申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
[tomos]
整形外科で医師の診察を受けられたほうがいいと思いますが、ご相談内容からは大転子部滑液包炎が疑われます。大転子は股関節部の外側で大腿骨の出っ張りとして触れます。この大転子と大臀筋腱(おしりの筋肉の大腿骨側の腱)の間には滑液包という一種の滑りをよくするための袋(この中には滑液という潤滑液のようなものがある)があり、これを大転子部滑液包と呼んでいます。この滑液包の前方には大腿筋膜張筋という腸脛靱帯(腸骨と呼ばれる腰の骨とスネの外側をつなぐ大きな靱帯)に連続する筋肉があります。
大転子部滑液包炎はこの滑液包の炎症で、MASHA さんの場合は、「外傷性」もしくは「スポーツによる慢性的な使い痛みが背景にあり外傷がきっかけとなって」本症が発症したものと推測されます。
大転子部滑液包炎では、大腿〜股関節の外側の痛みが出現します。治療は、スポーツ等の運動を控え、湿布をしたり鎮痛消炎剤を服用して安静にしていると数日〜数周間で症状が軽減します。弾発股は本症と類似した疾患です。
(Oct/25/1998)
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MINT
[98年 10月 14日 (水) 12時 17分]
40才の女性会社員です。大腿骨骨頭壊死の保存的治療の期間について教えてください。
私は2年前の8月に左大腿骨頸部骨折(労災)をし、接合手術を受けました。骨折は順調に治りましたが、その2ヶ月後に
MRI で骨頭壊死が見つかりました。そのため、免荷装具をつけて骨頭をつぶさないようしながら、自然治癒を待つことになりました。怪我から半年間は壊死の面積は広がり、その後少しづつ縮小してきました。しかしそれも今年の3月からは頭打ち状態で、まだ壊死は残っています。
私の骨壊死は当初からX線には全く写らず、MRIでのみ確認できます。骨頭の上部に2カ所、下方に2〜3カ所、パンを指でほじくったように見える壊死で、痛みは全くありません。
2年を過ぎた今年の8月で装具をはずして、1本松葉杖に変わりましたが、杖を使った歩行のままでは専門職である私の仕事も制限されています。
現在通院している私の病院では「症例もなく、これから先どれくらい時間がかかるのかわからず、MRIで確認していく他にないので、当面免荷は継続する」ということです。なお私は同年代より骨塩量が20%ほど低く、骨は弱いと言われました。
これから先の治癒の目途など、症例がありましたらご紹介ください。よろしくお願いします。
[tomos]
大腿骨頭壊死については、すでに手術説明書の「大腿骨頭壊死に対する人工骨頭置換術」、Q&Aの「大腿骨頭壊死の男性」で説明しています。
MINT さんは外傷(大腿骨頸部骨折)後に大腿骨頭壊死になったそうですが、これは「MRI検査で判明し、レントゲンではわからない程度」だということです。こういった症例は、MRIがまだ発明されていなかった昔ならばおそらくなかなか診断されなかったでしょう。
tomos も大腿骨頸部骨折の受傷後半年から1年経過した患者さんが骨頭壊死になり、レントゲン上も骨が潰れてきてがっかりした経験が何回かあります(結局、人工骨頭の手術をしました)。しかし、受傷から2年以上を経過していて、痛みがなくレントゲンでもわからない程度の壊死であれば、なるべく股関節に負担をかけないようにしつつも、もう免荷(脚に体重をかけないようにすること)する必要はないように思われます。骨頭壊死部が自然に再生されるには受傷後数年が必要ですが、すでに2年も経過していれば、たとえ患肢を確実に免荷していても壊死部の潰れるところは潰れ、レントゲン検査でそれがわかっているはずです。なお、「レントゲン検査で
coin-like lesion (島状の骨硬化)を示す例は、予後良好で、放置しても悪化することはない」そうです。
なお MINT さんはまだ40歳であるにもかかわらず骨塩量が同年代の約80%だということです。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)がこれ以上悪化しないようにし、また骨頭壊死の治りをよくするには、カルシウム(乳製品、豆類など)、ビタミンD(魚・椎茸など)、ビタミンK(納豆など)の多く含まれる食物を多く摂取しましょう。
(Oct/19/1998)
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N.T. [98年 9月 09日 (水) 15時 16分]
私は両脚の大腿部に、注射のための大腿四頭筋拘縮症があります。私は30歳ですが、将来悪化したり癌ができたりする心配はありませんか?やけどみたいに。
[tomos]
赤ちゃんの時に大腿部に頻回に注射を受け、それが原因で大腿前面にある大腿四頭筋(膝を伸ばす働きがある)がかたくて伸びにくい状態になって、歩行や正座に障害が残ることがあります。これを大腿四頭筋拘縮症といいます。また、臀筋に注射による拘縮症を生じた場合は臀筋拘縮症といいます。
筋拘縮症は筋肉注射により生じた医原病といえます。最近は筋拘縮症の新たな発生をみませんが、これは1975年の日本整形外科学会の「筋肉注射の危険性を警告した提言」や、1976年の日本小児科学会の同様な提言により、小児の注射に気をつけるようになったからです。その提言は、当時の若手整形外科医の有志による問題提起が発端だったそうです。
なお、大腿四頭筋拘縮症のためにガンになることはありません。やけどによる皮膚潰瘍などからガンになることがあり、これを瘢痕ガンといいます。たいていは扁平上皮ガンで皮膚ガンの一種です。筋拘縮症は筋肉がスジのように固くなった状態で、これが原因で皮膚ガンになることはありません。
(Sep/12/1998)
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Yuki [98年 7月 18日 (土) 9時 10分]
母の股関節のことでご相談がございます。
わたくしの母は、2年前44才のときに「股関節が変形している」ということで手術を行いました。その時には年齢もまだ若かったため「人工股間節ではなく自分の骨を利用し手術ができるため、その後人工の手術をしなくてもよい」という医師からのお話がありました。期間的には「3カ月位で元通り歩けるようになる」ということでしたが、実際には杖なしでは歩くことができませんでした。最近では痛みがひどくなり、痛み止めを毎日飲んで日々をすごすような状態になっていました。
そこで本人も「年齢的に若いこともあり、普通に生活を送るためにも」ということで、以前かかっていた病院ではない整形専門の病院にかかることになったのです。
そこでは「手術したときの本人の骨がまったく成長しておらず死んでしまっているために痛みがでる」というような説明があり、また「年齢的に人工股関節にするには早すぎるので、股関節付近の筋肉を切り痛みを和らげてはどうか」ということになりました。その手術をすると「歩けるようになるまでには約半年かかり、だいたい5、6年その状態ですむ。その後に人工股関節にすればよい」というお話なのですが、本人としては「今後の手術の回数が少なくすむこと」を望んでいます。今この筋切手術をして、その後人工にするのがよいか、今人工にしてしまうべきか。悩んでおります。
なお私ども家族は、前回の手術時、医師のミスもあったため、担当医さんのお話を素直に全部受け止めることが出来なくなっております。ですから「客観的に医療関係者の目からご覧になってこのようなケースはどうするべきか」お話頂ければと思っております。
以上、何卒宜しくおねがいいたします。
[tomos]
そもそも診断名が「変形性股関節症」なのかあるいは「大腿骨頭壊死」なのか、また2年前にどんな手術(骨切り術?)を受けられたのかも不明ですが、そのような診断だったとして2年前の手術(骨切り術?)をすれば「将来、人工関節の手術を絶対にしなくてよい」ということはありえません。ですから前回の手術は「医師のミス」というより「医師の説明不足」または「患者さまの誤解」(誤解するような説明をする医師が悪い?)といえるのかもしれません。
「このようなケースはどうするべきか」についてですが、実際に診察させていただきレントゲン写真を拝見しないと申し上げにくいですが、一般的には「46才ではまだ人工関節にしない方がいい」というのが大方の意見でしょう。片側だけの変形性股関節症の場合、「人工関節の適応年齢は60歳前後」です。これは、人工関節の耐久性からの議論です。特に片側の股関節が正常であれば、杖を使用して患側の脚に無理をかけずに歩くということが可能です。しかし逆の発想で、「人工関節にして関節の痛みを軽くして、松葉杖を使用してその人工関節を超大事に使う」という選択も可能です。どちらにせよ、杖を使わずに歩くというのは今後は難しいかもしれません。
現在勧められている手術のことですが、股関節周囲の筋肉の拘縮(固まっていること)がある場合は、一定の要件(具体的には、臼蓋形成不全が比較的軽い症例で、反対側の脚が正常で松葉杖の使用により患肢に長期間体重をかけずに歩ける場合)を満たせば「筋解離術」の適応となります。筋解離術というのは「股関節周囲の筋肉や筋膜の切離を行い股関節にかかる圧力を少なくて関節の痛みを減らす」手術です。これで関節が治るわけではないですが、人工関節の手術適応年齢(片側だけが悪い場合は60才前後)まで何とか関節を持たせられる場合があります。
もちろん、前述のように人工関節を選択することも絶対に間違いというわけではありません。要は選択の問題です。かけがえのない大事なお母様の体のことですから、大いに迷って一番納得のいく結論を出して下さい。
(Jul/22/1998)
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あっこ [98年 7月 01日 (水) 16時 50分]
はじめまして。仕事中に TOMOS のホームページを見つけて、仕事をほったらかし、夢中になってしまいました。
私は、現在23歳の会社員です。「先天性」の「変形性股関節症」で、5年前に左脚の手術を受けました。右側もそうなのですが、左ほど悪くなかったので今のところ手術はしてません。
一年に一度は検診に行っていますが、結婚を考えるにあたり心配があるのです。それは、子供についてです。私の父親、その祖母が同じように股関節がわるく「遺伝」だと思っていましたが、先生のお話によると「遺伝性ではなく、家族性」とのことでした。「今のところその遺伝子はどこにも見つかっていないため」だそうです。
遺伝性と家族性の違いを聞きそびれてしまい、どのように調べてよいかわからず、途方に暮れております。(年に一度しか検診に行かないため)違いを教えていただけませんでしょうか?
そして「右側も軟骨のあるうちに手術した方が良い」と言われてますが、結婚後、出産後・・・いつがいいのか悩んでおります。実は、相手のご両親にこのことについてお話したところ、今までうまく行っていた話が急展開、猛反対に変わってしまったのです。「生まれてくる子供が心配だから」だそうです・・・
お忙しいとは思いますが、一言でもアドバイスを頂ければ・・・と思い、メールをお送りして見ました。どうぞよろしくお願いします。
[tomos]
結論から申し上げますと、あっこ様の股関節の病気を理由に結婚に反対することは、医学的にもたいへん不合理な話だと思います。《たとえて言えば、キスで HIV(エイズのウイルス)が感染すると信じるのと同じ位愚かだと思います。ご存じのように、HIV はキスではうつりません。》それは、我が国では変形性股関節症の大半は「股関節臼蓋形成不全」ないしは「先天性股関節脱臼」(二つとも似たような病気)が原因ですが、これらは、多少の遺伝的素因に生後の環境的因子(つまり育児法)が加わって初めて発症するからです。つまり完全な遺伝病ではないからです。また、もし万が一にも遺伝病であったとしても、それを理由に結婚に反対すること自体愚かなことです。それは遺伝的に全く異常のない人は世の中にはおそらく存在しないからです。表に現れない隠された遺伝病(劣性遺伝)の遺伝子はほとんどの人が多かれ少なかれ持っていると考えられています。(なお、遺伝性と家族性はほぼ同義語と考えて下さい)
《子供の健康を心配をされるのなら、tomos は、子供の間接(受動)喫煙の方がもっと心配です。たまたま両親が喫煙するというだけの理由で、一緒に生活する子供は否応なしに間接喫煙を余儀なくされ、人生のスタートから健康をむしばまれているのですから。》
以下に、あっこ様の病気に関して、少し説明をさせていただきます。
あっこ様は、ご自分では「先天性」の「変形性股関節症」とおっしゃっていますが、変形性股関節症は先天性には起きませんので、ここでは「生まれつき」股関節の臼蓋(屋根)が小さくて(このような状態を「臼蓋形成不全」といいます)、これから徐々に股関節の軟骨がすり減りつつある状態と解釈させていただきます。なお、臼蓋形成不全に関しては、「整形外科手術説明書」の中にある「臼蓋回転骨切り術」の説明文中に解説があります。
「臼蓋形成不全」に極めて近い病態に「先天性股関節脱臼」(以下、先股脱と略す)があります。先股脱には臼蓋形成不全を伴うことがほとんどです。脱臼したために屋根の成長が阻害されると考えるのが一般的で、この二つはほぼ同じ疾患とみなされます。ところで、先股脱は一応「先天性」という名前がついていますが、生後の環境因子に左右されるところが多分にあり、育児法に配慮すれば先股脱の発生を減少させることができます。現に、最近は正しい育児法が普及し、先股脱の発生が減ってきています。
先股脱は胎内で発生する場合と生後発生する場合があります。たとえ胎内で発生しても、生後に育児法に気をつければ自然に治る場合が多くあります。また生後発生するケースは、育児法が悪い場合です。つまり、実際に先股脱として治療されるのは、@不幸にして胎内で発生し、かつ育児法が悪いために自然に治らなかった場合、A育児法が悪いために生後発生する場合、B(少ないですが)胎内で発生し、育児法が良いのにもかかわらず自然に治らなかった場合、の三つのケースであり、この中でも@Aが多いと言われています。つまり育児法に気をつければ、先股脱はかなり発生を減少させることができるのです。
先股脱を予防できる正しい育児法は、簡単に述べますと、赤ちゃんの股関節を十分に開いて自由に動かせる状態にしてあげることです。たとえば、赤ちゃんを抱くときは「コアラ抱っこ」といって、股関節を90度以上屈曲位(開いた状態)で母子が向かい合って赤ちゃんを抱っこすると、先股脱を予防できます。
しかし、育児法が悪くても、大部分の赤ちゃんは先股脱にならず、上記のBのようにまれには育児法が良くても胎内で発生した先股脱が自然に治らない例があるわけですから、先天性の素因も多少は影響しています。先股脱になりやすい素因は、@女性、A遺伝、B胎内での肢位、C他の先天的な病気の影響などがあげられます。ここでいう遺伝の関与は、脱臼しやすい靱帯(骨と骨をつなぐスジ)の性質は多少遺伝するという程度であり、繰り返し強調しますが脱臼という状態がそのまま遺伝するのではありません。
(以上の記述は、MEDICAL VIEW 社、新図説臨床整形外科講座、第7巻「股関節」の先天股脱の項目(石田勝正先生担当)を少し参考にさせていただきました)
手術時期のご質問についてですが、tomos は、股関節の手術を予定している適齢期の女性には、結婚・出産後に手術を実施するようにお勧めしています。出産に関しては、脚が十分に開けなくても、骨盤が狭くても、帝王切開という手段があります。しかし、手術前後にはレントゲン検査を頻繁に実施したり、手術時は全身麻酔をかけ、手術後は輸血をしたり抗生物質を投与したりと、けっこう母体や遺伝子に無理をかけます。その前に生命の再生産という人生の大事なイベントは、達成しておくのが安全だと思います。
(Jul/2/1998)
あっこ [98年 7月 03日 (金) 16時 40分]
tomos 先生へ
早速、ご丁寧なお答えをありがとうございました。今、感動で胸がいっぱいです・・・。先生の回答を印刷して、親に見せて、今後の方向を考えて行こうと思います。(親は、つい先日まで[遺伝]と信じてましたので)たまたま、今日、同じ手術をした女性(入院中に友達になりました。)と会うので、今晩の酒の肴に・・・失礼、メインディッシュにさせていただきたいと思います。
ところで、「股関節症が育児法によっても起こりうる」(正しくは、「先天性股関節脱臼は育児法により減少させることができる」 by tomos)、というのは初耳でした。ただし、私の場合、元々骨頭自体もひどく変形していましたから、その点で、「それでも遺伝はあまり関係ないの?」という疑問が残ります。(脱臼しやすい靱帯の性質は多少遺伝します。by tomos)
右足の手術についてですが、先生が最後に書いて下さったように(子供は欲しいので)出産後、にしようかなと思いました。今現在、角度は15°あるということです。通常は、30°でしたっけ?そして、私のその15°について、やはり手術は必要でしょうか?できるなら、痛い思いは・・・避けたいのですが、いかがでしょう?
最後に、先生のアドバイスがなかったら、今できるだけ早く手術をして、治ってから結婚をしようかなと考えておりました。そのためには会社も辞めなくては、と真剣に悩んでました。手術をして下さった先生も、「私の芸術作品なんだから、大切にしてくれる人じゃないと私も許しません!」とのことでしたので、もう少し結婚についても考えようと思います。
仕事をほったらかしてまで、メールをした甲斐がありました。本当にありがとうございました。
[tomos]
先天性股関節脱臼(先股脱)は整復後、順調に経過し何ら障害を残さないこともあります。しかし、@関節の中に関節の縁などがはさまる、A臼蓋(屋根)の発育が悪い、B関節の適合性(フィッティング)が悪い、C脱臼のため骨頭にダメージがあって骨頭の変形をきたす、などのために将来、変形性股関節症になることがあります。
@〜Cを生じないためには、なるべく早期に脱臼を発見し、脚を開いた状態で自由に動かす装具(リーメンビューゲル装具、RB装具)を装着して、自然に整復してやることが大切です。最近は先股脱の治療はこのRB装具が主流で、これにより8〜9割の先股脱は自然に整復されます。これでも治らない場合は入院して、@牽引で整復、A手術で整復、といった治療の適応になります。
臼蓋(屋根)のかぶりは15度もあれば、@太らない、A重労働・過度なスポーツをしない、などの注意を守れば、特に何事もなく一生を過ごすことも可能です。ただ、一度脱臼していますから、関節の適合性等に問題があって変形性股関節症になることもあります。
あっこ様は両側の股関節が悪くて、すでに症状の強い方の脚を手術なさっています。この場合、手術をした方の脚の経過が順調であれば、これを支持脚として、反対側の手術をしていない方の股関節をかばって歩くことも可能で、もう片方は手術をせずに一生を過ごせることもあります。完璧な治療を目指すのなら両方を手術することも選択できます。
身長が150cmであれば、関節に負担をかけないために体重は50kgを超えないように注意しましょう。水泳(クロール、背泳、水中ウォークなど)で筋力をつけると関節がしっかりして、変形性股関節症になりにくくなります。
(Jul/7/1998)
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YS310 [98年 5月 19日 (火) 2時 8分]
tomos のホームページを初めて拝見させて頂き、ご相談にのって頂きたくメールを送りました。
私は47歳の男性ですが、1ヶ月位前に1週間おきにゴルフを行った後から股関節をひきずるようになり、整形外科で治療を受けていましたが、いっこうに回復しませんでした。最近、MRI検査を受けたところ、「初期の大腿骨頭壊死になっている」との事でしたが、整骨院で検査の前にカイロプラスティックをしましたら歩行そのものが出来るようになり、少しずつ快方に向かっているような気がします。
現在診て頂いてる先生も「大学病院の先生とMRI検査の写真を診ながら話し合いをしよう」と言っていますが、この場合、症状が早期の大腿骨頭壊死でも必ず手術をしなければならないのでしょうか?それとも、手術をしないで薬では直らないのでしょうか?また、手術後は以前のような歩行が出来ず、松葉杖をしなくては歩けなくなるのでしょうか?お教え下さい。
[tomos]
ここでは、診断が確かに大腿骨頭壊死であるという前提のもとに、お返事をお書きいたします。
大腿骨頭壊死に関しましては、「手術説明書」の股関節外科のところに「大腿骨頭壊死に対する人工骨頭置換術」の記載があります。そこで簡単に「大腿骨頭壊死」に関して説明していますので、参考にしてください。
この病気で手術が良い適応なのは、むしろ病気の早期の段階です。大腿骨頭壊死の程度が軽く骨頭の変形をまだ生じていない時期であれば、血行のある骨を移植する等の方法で治療することができます。しかし壊死が進行し骨頭がつぶれてしまっている場合は、骨頭を切除し人工材料の骨頭に置き換える手術を選択することになります。臼蓋(関節の屋根側)が傷んでいる場合は、それも人工材料で置き換えることがあります。
「薬で治らないか?」とのご質問ですが、大腿骨頭に血が通わず組織が壊死(腐ること)になるわけですから、残念ながら薬で治すという方法はありません。血行を良くする薬は確かにありますが、既に血が通わなくて壊死になりかかっているわけですから、この段階では効果はありません。
次に後遺障害に関してですが、骨頭がどの程度変形するかで違いますが、多かれ少なかれ骨頭が変形しますから、外出時など少し長距離を歩くときに関節痛などのため杖が必要となることが多いようです。多くの場合、杖がなければ全く歩けないということにはならないと思いますが。人工骨頭置換術になった場合でも、人工骨頭を長持ちさせるという意味もあり、やはり杖を使っていただくようになります。
以前は、大腿骨頭壊死を骨頭がまだつぶれていない早期のうちに発見するというのは、なかなか難しかったのですが、最近はMRI検査のおかげで可能になりました。大腿骨頭壊死になったのはたいへん残念なことですが、この病気はできるだけ早期のうちに治した方が後遺障害が少ないわけですから、YS310さまは少しだけラッキーといえるでしょう。
(May/19/1998)
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M.M [98年 5月 14日 (木) 0時 37分]
お世話になります。先月4月15日に手首(TFCC)について相談をした M.M です。今回は骨盤骨折(左寛骨臼前柱骨折)についてアドバイスをお願いします。
昨年12月16日転落により骨盤を骨折し、12月19日に骨折部をボルト4本で固定する手術を行いました。今年2月5日に退院、リハビリも順調に経過し、3月後半には杖なしで歩くことも、階段の上り下りもなんとかできるようになったのですが、持久力がなく、20〜30分位しか歩けませんでした。
そこで4月初旬から、筋力アップと体力回復のために、スポーツクラブのプールで約1時間水中歩行する訓練を25日間連続でしました。しかし思うように持久力がつかないので、それではとエアロバイクを15分間(負荷40〜60W)する訓練を1週間続けたころから左脚が重くなり、左膝と股関節に痛みを感じ、歩行も困難になりました。・・・負荷としては高くないと思うのですが、やはり焦ると良くないですね。
2週間経過しても痛みがとれず日々痛みが増すので、病院でレントゲン検査をしました。結果は異常ありませんでした。担当医の話では「痛みがこれ以上ひどくなるようであれば軟骨の摩耗も考えられるが、今現在はこれといった治療はない」とのことで、とりあえず鎮痛消炎剤(ロキソニン)をもらい、当分は安静にし様子を見ることにしています。
ここまで長々と説明して申し訳ありません。そこで相談ですが、術後5ヶ月近くなるのに遅々として筋力が回復しないのですが、一般的にはどのようなものでしょうか。また、今後痛みが生じない機能回復方法はないでしょうか。次に、私の仕事は大型車の修理に従事していますが、仕事に復帰し重量物などをかかえた場合、股関節部に将来的のどのような影響が考えられるでしょうか?よろしくお願いします。
[tomos]
股関節は大腿骨と骨盤との間の関節です。骨盤側は寛骨臼蓋といい、お椀の内側のような屋根を形作り、球状をした大腿骨の一番頭側(大腿骨頭という)との間で股関節という関節を形成しています。M.M. 様が骨折されたのは、この股関節の屋根にあたる寛骨臼蓋のところです。この部位の骨折では、寛骨臼蓋と大腿骨頭の適合性(はまり具合)が悪くなり、股関節の痛みや可動域(動く範囲)が悪くなる後遺障害が残りやすくなります。障害の程度によっては、重量物をかかえるなどの仕事は続けられなくなることもあります。
また、長期間ベッドで安静にしているため、筋力の低下や全身の呼吸・循環機能(持久力)の低下が必ず生じます。これらの回復には、水泳や水中歩行のリハビリが(体重がかからないので)最適です。また、痛まなければエアロバイクも(体重がかからないので)望ましいでしょう。ただし、関節の可動域が悪いのに無理をすると、やはり痛みが出現します。
筋力や持久力の回復は、2〜3ヶ月訓練を続けて、やっと違いが出たと感じられるもので、急には効果が出ません。また、年齢が高くなるほど回復が遅れます。しかし必ず効果が出てきますから、あきらめずに、気長にリハビリを続けましょう。
(May/16/1998)
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r-tom [98年 5月 13日 (水) 0時 18分]
10歳になる女児のトラブルでご相談致します。
学校で徒競走の練習中に「太もも前側中央部にピキッというような衝撃を感じて、以後歩行が困難な程に痛みが出て来た」ということで整形外科を訪ねました。診てもらったところ、「軽い肉離れであろう」ということで湿布をしています。
事故後4日程になりますが、脚に力が入らない様で、足をつくと「がくっ」と肩を落とすほどに支えるのが大変な様子です。
この「肉離れ」とはどのようなものなのでしょうか?また、治療法の実際、及び日常に注意するべき点等につきまして、ご助言をいただきたくお願い致します。
[tomos]
ご存じのように筋肉は筋繊維が束になってできていますが、肉離れとはその束になった筋肉の一部が断裂(切れること)することです。
広範囲に断裂した場合は、手術で縫合します。しかし、たいていは部分的な断裂で、保存的に治療します。切れてしまった筋肉は、元のようにはつながりませんが、まわりの筋肉とくっつきます。約3週間で治ります。痛みがあれば、湿布をしてあげてください。受傷直後は、松葉杖を使用し脚に体重がかからないようにしてやると痛みが楽です。もう4日もたっているので必要ないでしょうが。ふくらはぎ等の肉離れでは、ギプスを巻く場合もあります。
肉離れの予防のためには、スポーツの前に十分に準備体操(ウォームアップとストレッチング)をしましょう。特に中高年は気をつけましょう。なお、10才の小児の肉離れは、比較的珍しいように思います。
(May/13/1998)
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U-man [98年 5月 07日 (木) 19時 16分]
はじめまして。私は24歳の女性です。相談したいことは股関節の痛みです。
一年ほど前、歩いていると突然「ボキ」と右の足の付け根(股関節)が鈍い音を立て、足を地面につけることが出来ないほどの痛みが走りました。その痛みはしばらく続いたので、病院で診てもらったところ、「骨が大きくて周りの筋肉や筋を引っかけている。骨を削る手術が必要」と言われました。それと「手術はあたなの時間のあるときで良いから、手術したくなったら来なさい」とも言われたので、一年間ほったらかしです。病名や詳しい説明を受けなかったので、不安もあります。
ちなみに、私は中学1年の時に膝を傷め、約3年ほど通院し、両膝に電気を流したり引っ張ったりする治療を受けていました。それから、股関節ですが、昔から歩いたり故意にも「ぽきぽき」となります。
1年前の股関節の「けが」のときは、いつもと変わらぬ歩行をしていました。決して足をねじったりしたわけではありません。たまに右の関節の痛みがでてきます。でも、その周期がだんだん縮んで来てるように思います。それと、左も同様に痛みを感じるようになってきて、そろそろ手術をした方が良いのではと考えるようになりました。
でも、本当に手術が必要なのか、病名はなんなのか、手術するにもどのくらいの入院が必要なのかなど、わからないことがいっぱいです。こんな文面で症状がうまく伝わっているか心配ですが、なにかアドバイスお願いします。
[tomos]
運動に伴って「ポキッ」、「クリッ」などと音がしたり、バネのようにひっかかる現象を「弾発(だんぱつ)現象」といいます。この現象が股関節で生じた場合を「弾発股」と呼んでいます。
U-man 様の場合は、腸脛靱帯(太ももの外側にある靱帯で、腸骨というズボンのバンドがあたる骨から、膝の外側のスネの骨までつながっている)と股関節の大転子(大腿骨の外側の骨の出っ張り)の間で弾発現象が生じています。若い女性に多いタイプです。
弾発現象があっても痛みなどの症状がなければ、治療の対象になりません。また、U-man 様のように症状があっても、なるべくスポーツを控える、腸脛靱帯のストレッチングをする、患部へのステロイドの注射等で症状が改善する場合があります。
太ももの外側(腸脛靱帯)を伸ばすストレッチングは、左脚の場合でしたら、立位で両脚を交差させ(右足が前)、両腕を右側から足の方へ下垂させて、左の体側〜膝の外側が伸ばされる感じにします。反動をつけずに、ジワッとするのがコツです。最低でも15秒はしましょう。
こういった保存的治療でよくならない場合は、腸脛靱帯を延長する等の手術をする場合があります。なお、手術をしても10〜30%は、症状が残るか再発する例があるそうです。tomos はこの手術の経験がありません。
(May/10/1998)
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H.K. [98年 3月 23日 (月) 22時 40分]
妻のことでご相談いたします。
妻は39歳。昨年12月より右脚の付け根が痛いと訴えておりました。教員という仕事柄、立ち仕事が多く、そのためだろうと考えておりましたし、実際、休むと痛みが消えるため、当初はあまり気に掛けておりませんでした。
しかし、痛みが長引くため、先日、整形外科の専門医の診察を受けました。診断は、「股関節臼蓋形成不全」とのこと。「若い頃は筋肉がカバーしていたのだが、筋肉が衰えるに従って痛みが出てきた」とのことでした。筋力を付けるためのリハビリの方法と、最悪の場合は手術であることを聞いてきましたが、「股関節臼蓋形成不全」とはどのようなものか、又、その治療法等についてお伺いできたらと思い、メールをさしあげます。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
[tomos]
「TOMOS整形外科手術説明書」の中にある「臼蓋回転骨切り術」の説明文中に、臼蓋形成不全に関しての解説があります。
(Mar/24/1998)
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M.M [98年 3月 02日 (月) 13時 58分]
はじめまして。30才の女性です。今日はどうしても決心がつかないことがあり、ご相談します。
私は左脚が変形性股関節症です。中学ぐらいの時から痛み出し、今では足の長さに左右3cm差があり、痛みのため歩き方が左右非対称です。
思いきって人工関節の手術をうけようと病院に行ったのですが、2つの病院からそれぞれ違う見解を示され迷っています。
(A)1つは「人工関節は最後の手段だし、まだ若いから絶対駄目。痛みは薬で押さえて!」というもの。
(B)1つは「自分の希望できめてもいい。」というもの、こちらは再手術はそんなに大変じゃないとおっしゃいました。
人工関節の耐久年数は15年ですので、再手術が必要なのもわかりますが、私としては手術をしたいのですが・・・
あと結婚を控えていて、出産は手術の前か後どちらがいいか知りたいのです。人工関節にしたとき、出産に悪影響はあるのですか?
[tomos]
変形性股関節症における人工股関節の一般的な手術適応は、重症の股関節症に対して、(1)関節症が片側の場合は、おおむね60歳以上、(2)両側の場合は、おおむね50歳以上です。
人工関節は、重度の変形性関節症には救世主のような存在です。しかし、これにより関節が機械のジョイントのようになり、また歯にたとえれば「総入れ歯」になるわけです。改良が進んだとはいえ耐用年数の問題もあり、若年者に安易に人工関節手術を濫用するのは避けなければならないと tomos は考えます。
なお、慢性関節リウマチなどのように全身の関節がおかされ、日常生活動作も限られている病気では、たとえ30歳代でも人工関節手術を選択する場合があります。
重症の関節症といえども、手術だけが治療法というわけわけではありません。杖や傘を使用して関節への負担を減らす、体重をコントロールする、股関節周囲の筋力を増強する、痛いときは鎮痛剤を使う、激しいスポーツや関節に負担のかかる仕事を控えるなどのケアにより、症状を軽くすることができます。またその結果、人工関節手術をする時期を後にずらせることができます。
とはいえ、どうしても「人工関節手術を」という患者様もいらっしゃいます。将来、人工関節を入れ替えるという大変な手術が待ちかまえていることを十分納得のうえでなら、手術に応じてくださる先生も確かにいます(tomos はきっとしませんが)。
人工関節手術をするかどうか、これは(ある程度将来の病状の予測がつく)選択の問題です。
次に二番目のご質問に関してですが、股関節の手術を予定している適齢期の女性には、結婚・出産後に手術を実施するようにお勧めしています。出産に関しては、脚が十分に開けなくても、骨盤が狭くても、帝王切開という手段があります。しかし、手術前後にはレントゲン検査を頻繁に実施したり、手術時は全身麻酔をかけ、手術後は輸血をしたり抗生物質を投与したりと、けっこう母体や遺伝子に無理をかけます。その前に生命の再生産という人生の大事なイベントは、達成しておくのが安全だと思います。
(Mar/5/1998)
M.M [98年 3月 17日 (火) 18時 03分]
人工股関節の手術について相談したものです。ご回答ありがとうございました。
先生の御意見は、とても思いやりにあふれていて、うれしかったです。手術の説明書の方も、知らない事や気にもしなかったことが記載されていて、大変参考になりました。これらを参考に時間をかけて考えてみます。
[tomos]
微力ながらお力になれて、光栄です。
(Sep/12/1998)
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