反復性肩関節脱臼に対する手術(全身麻酔)

1(関節唇損傷、上腕骨頭の圧迫骨折)
肩関節は一度脱臼してしまうと、反復性(習慣性)となってしまうことが非常に多いと言
われています。いわゆる“くせになる”というものです。これは初回脱臼時に、関節内の
「押さえ」である関節唇が損傷され、また骨頭側も圧迫骨折を起こして扁平となり、乗り
越えて脱臼しやすくなってしまうためです。(これの診断のためにCT関節造影、MRI
関節造影が施行されます)
これを防止するためには内旋筋力のトレーニングが有効ですが、3回以上脱臼してしまっ
た場合、脱臼を予防するためには手術をすることが多くなります。
特に、脱臼しそうで不安でありスポーツができない、日常生活に支障があるといった場合
に手術となります。

2(麻酔)
手術は全身麻酔で行います。麻酔は麻酔科医が実施します。全身麻酔は安全な麻酔ですが
患者さんの状態、持病、体質、年齢などによってはリスクを伴う場合があります。
なお全身麻酔からさめたとき、まだのどにチューブが挿入されている場合がありますが、
すぐに抜きます。また、手術後しばらくの間、尿道に管を入れている場合があります。

3(手術 Bristow + open Bankart repair)
手術では、まず側臥位(横向き)で関節鏡を施行し、関節唇、臼蓋上腕靱帯、骨頭の様子
を観察します。状態を把握したところで仰臥位(仰向け)とし、肩関節の前方に約10cm
の皮膚切開を置きます。烏口突起を骨折させて肩関節に進入します。関節唇を本来あるべ
き位置に戻して縫合し、緩んだ関節包を縫い縮めます。さらに、骨折させた烏口突起を関
節の前方にスクリュー固定して終了です。
現在、関節鏡視下のみで手術を施行する整形外科医もいます(Caspari法)。しかし、切開
で行う手術の再脱臼率を5%前後とすると、関節鏡視下手術では10〜20%と高く、私たち
は未だ導入していません。将来的には関節鏡視下手術の成績が向上し、再脱臼率も低くな
ってくるかもしれません。

4(術後の固定)
約3週間、手術した側の腕を胸部に密着させて固定し、それ以後外旋を制限しながらリハ
ビリテーションを施行します。外旋制限は残存します。

5(リハビリ)
人の循環(血のめぐり)、呼吸、筋肉、骨、関節などは不必要に安静にしているとその機
能が低下し、回復に相当な期間と努力を要することがあります。そのため、患者さんの状
態がよければ、手術後できるだけ早くリハビリ等(筋力トレーニング、可動域訓練等)で
機能回復に努めていただきます。

6(再手術)
まれにスクリューが折損したり、抜けてしまったりして固定し直さねばならないことがあ
ります。約5%の患者が再び反復性脱臼を起こすことがあります。

7(骨髄炎)
まれに手術部に細菌が感染し、骨、関節が化膿して骨髄炎を生じ治療が困難になることが
あります。その予防のために、抗生剤を点滴・内服薬等で投与させていただきます。もし
骨髄炎を生じた場合は、直ちにその治療を開始します。その場合、再手術・再々手術とな
ってしまいます。

8(合併症・後遺障害)
移植骨片が癒合しないことがまれにあります。また、筋皮神経麻痺を起こすことがごくま
れにあります。その他に、慢性の骨髄炎、目立つ傷跡、種々の痛み・しびれ等が残ったり
将来、変形性肩関節症になることがあります。

9(スポーツ復帰)
順調にいけば、約3ヶ月でスポーツに復帰することが可能です。

                          − 作者 しゅうちゃん −