高齢者大腿骨頸部骨折人工骨頭置換術(腰椎麻酔) 1(高齢者大腿骨頸部骨折の治療) 大腿骨頸部骨折は骨の弱っている高齢者によく発生し、「寝たきり」になる原因の一つで す。そのまま放置すると、肺炎、床ずれ、痴呆の出現・悪化などをきたし致命的となるこ とがあります。そのため、手術に耐えうる体力があれば手術をして骨折を早く治し、なる べく早くすわったり歩いたりできるようにと考えています。(早期離床) 今回骨折した大腿骨の付け根の頭の部分は、血液の供給などの関係から骨をつなげたとこ ろで非常に治りにくい部位です。そこで骨折の部位を人工材料で置き換える方法が開発さ れました。これを人工骨頭置換術といいます。 2(麻酔) 手術は腰椎麻酔で行います。まれに麻酔によりショック症状等が生じる場合があります。 その場合は直ちにその治療をします。また術後一時的に頭痛等が生じる場合があります。 3(手術) でん部に約 cmの切開を加え骨折部位を露出し、転位している(ずれている)大腿骨頭 を摘出、人工材料の骨頭(人工骨頭)で置き換えます。人工骨頭と骨のすきまに骨セメン トを充填し、ゆるまないようにする場合があります。 4(輸血) 骨折や手術による出血のため、輸血をする場合があります。 5(手術後) 手術後は脚を内側にねじると人工骨頭が脱臼することがあり、(特に術後3週間は)脚を 外に開いた状態にしていただきます。手術の翌日からすわれます。また順調ならば、1〜 3週間で(杖や歩行器を使用し)歩行が可能です。 6(リハビリ) 人の循環(血のめぐり)、呼吸、筋肉、骨、関節などは不必要に安静にしているとその機 能が低下し、回復に相当な期間と努力を要することがあります。そのため、患者さんの状 態がよければ、手術後できるだけ早くリハビリ等で機能回復に努めていただきます。なお 当然のことながら骨折後は骨折前よりも「体力」が低下します。 7(再手術) 人工骨頭の耐用年数は約15年とされています。しかし何らかの原因でそれよりも早くゆ るんだりすり減ったりして再手術を要する場合があります。 8(骨髄炎) まれに手術部に細菌が感染し、骨が化膿して骨髄炎を生じ治療が困難になることがありま す。その予防のために、抗生剤を点滴・内服薬等で投与させていただきます。もし骨髄炎 を生じた場合は、直ちにその治療を開始します。 9(脂肪塞栓) 大きな骨折の場合、まれに骨髄内の脂肪が全身(特に肺や脳)にまわって塞栓(血管がつ まること)を生じ、肺・脳などの臓器の重大な症状が出現することがあります。もし発症 した場合は、直ちにその治療を開始します。 10(合併症・後遺障害) 内科の合併症を持つ高齢者の場合、手術中・手術後に不測の事態が発生することがありま す。その場合は内科医と連係し万全の処置をいたします。なお大腿骨頸部骨折を受傷した 高齢者の一年後の生存率は、約80%と言われています。 後遺障害として、関節の変形・拘縮(固まること)、筋力の低下、四肢の短縮、慢性の骨 髄炎、目立つ傷跡、種々の痛み・しびれ等が残る場合があります。 |