足関節外側靱帯修復術(腰椎麻酔) 1(足関節外側靱帯損傷) 関節の靱帯は関節の上下の骨をつなぐロープのようなもので、関節がぐらつかないように 安定させる働きがあります。捻挫で足首をくじくと、足関節の外側の靱帯が損傷すること があります。その程度が軽い場合は、湿布やサポーターをして様子をみると約3週間位で 痛みもとれ、後遺障害もほとんど残りません。それに対して捻挫の程度が重度の場合は、 傷みや腫れも著しく、ギプスをまくことになります。たいていの場合は、ギプス固定によ り痛みがとれ日常生活にもほとんど支障がなくなります。しかし、なかには足関節のゆる みが残り、足首が捻挫しやすくなったり、慢性的な歩行時の傷みが残存することがありま す。一方、足関節の新鮮な靱帯損傷を靱帯を縫合する手術で治すという選択があります。 手術をするメリットは、確実に靱帯を修復できるという点ですが、ギプス固定のみで治療 して順調にいった場合に比べて成績に大きな差異はありません。 2(麻酔) 手術は腰椎麻酔で行います。まれに麻酔によりショック症状等が生じる場合があります。 その場合は直ちにその治療をします。また術後一時的に頭痛等が生じる場合があります。 なお手術中は、出血しないように太ももの付け根をターニケットという器具で圧迫してい ます。そのため、手術中その部位が多少痛く感じる場合があります。 3(手術) 手術では、足首の外側の皮膚を約 cm切開します。まず損傷した靱帯を観察します。靱帯 が中央で切れて縫合が可能な場合は、それを縫合します。靱帯が骨の付着部で切れて、そ のままでは縫合が困難な場合は、骨に骨孔をあけてそこに糸を通して靱帯を骨に縫合しま す。靱帯が切れずにその付着部で骨ごとはがれている場合があります。その場合は、その 骨が十分大きければ、その骨を元の位置に固定する方法をとります(金属製の固定材料を 使用する場合があります)。しかしその骨が小さければ、その骨を摘出し、靱帯を骨孔に 通した糸で骨に縫いつける方法をとります。ときに、靱帯損傷がかなり以前のけがによる もので、その靱帯を修復できない場合があります。その場合はその靱帯の残りを骨に溝を 掘って骨孔に糸を通して骨に縫いつけたり、人工の靱帯を骨のトンネルを通して靱帯の代 用にして靱帯を補強する場合があります。 4(ギプス・松葉杖) 手術部の安静のため、手術後ギプスをします。ギプスは手術法によりますが約3〜6週間 で除去する予定です。しばらくは松葉杖が必要です。痛みがとれ次第、ギプスのままで足 に体重をかけて歩行していただきます。 5(リハビリ) 人の循環(血のめぐり)、呼吸、筋肉、骨、関節などは不必要に安静にしているとその機 能が低下し、回復に相当な期間と努力を要することがあります。そのため、患者さんの状 態がよければ、手術後できるだけ早くリハビリ等で機能回復に努めていただきます。 足関節の靱帯損傷の場合、下肢の筋力を増強する訓練が効果的です。 6(関節炎) まれに手術部に細菌が感染し、化膿して関節炎を生じ治療が困難になることがあります。 その予防のために、抗生剤を点滴・内服薬等で投与させていただきます。もし関節炎を生 じた場合は、直ちにその治療を開始します。 7(合併症・予後・後遺障害等) 距骨という骨に小さな骨・軟骨の骨折を合併していることがあり、その治療を要すること があります。 同様の捻挫をすれば、再び靱帯を損傷することがあります。 関節の緩みが残存した場合、将来関節に変形性関節症を生じ、その治療を要する場合があ ります。 手術部位の近くには知覚神経があり、その影響で多少しびれが残る場合があります。 その他に、筋力の低下、目立つ傷跡、種々の痛み等がしばらく続く場合があります。 |