[Q&A ライブラリーへ戻る|〜Aug/1998 骨折・脱臼・抜釘 Q&A|May/2001〜 骨折・脱臼・抜釘 Q&A]

Sep/1998〜Apr/2001 骨折・脱臼・抜釘 Q&A ライブラリー

[01年 4月 15日 (日) 17時 58分] 大阪府在住、33歳、男性
身長 173cm、体重 65kg、職業:会社員
【スポーツ歴】
特に今は何もしてません。中学時代剣道。
【既往歴】
血液中のビリルビンが普通の人の4倍値を示した為○市大病院で精密検査。ギルバート症候群の疑いと診断。エコー検査で胆のうに2mmのポリープあり経過観察中
【家族歴】
特になし
【合併症等】
特になし
【現病歴】
肩甲骨骨折
大学付属病院で肩鎖関節脱臼併発と診断
【医療機関】
総合病院整形外科+リハビリテーション科
○大付属病院整形外科専門外来
整骨院
【診療内容】
2/24に自宅階段から足をすべらして転落。左肩強打しその日総合病院整形外科へ行きレントゲン撮影2枚。「肩甲骨骨折」全治4週間と診断。鎮痛消炎剤のロキソニン60mgと胃の粘膜を保護するムコスタ錠100mgを処方。三角巾と固定バンドで2週間固定と言われ2週間後に来るよう言われた。
しかし固定ベルトで強く締め付けている為か上腕のあたりが血液が泡を立てるように
ぶくぶく振動し激痛が走ったため固定ベルトをゆるめ、痛みが治まるとまた固定ベルトをし激痛が走るとゆるめるという行為を3回ほど繰り返し、左手がむくみだしたため
骨折後1週間たった3/3に診察を受ける。主治医はバンドの固定をはずして三角巾だけで良い。適当に散歩しなさいと指示。また鎮痛消炎剤とムコスタ錠飲むのを止めるよう指示を受ける。
骨折から2週間目にあたる3/12。3度目の診察でリハビリ開始を告げられ
振り子運動指示とリハビリテーション科で週3回のリハビリを受けることになる。
最初の1週間は特に激しい痛みはなくリハビリしていました。
しかしリハビリ開始後2週間目くらいから痛みが激しくなってきたため
3/19主治医に相談。鎮痛剤を飲むよう指示を受ける。
しかし3/23痛みが激しくなりリハビリの理学療法士が主治医に見てもらう
よう言った為、骨折から1ヶ月目となる3/24に診察。レントゲン2枚を撮る。
異常なしの所見。痛みを緩和してリハビリをがんがんしたほうが良いとの
主治医の指示で脇の下に注射を受ける。
3/26経過観察のため再診察。肩に注射を受ける。
その数日後から寝起き時に左胸ののど仏3cmくらい下で鎖骨との継ぎ目から3cmくらいの位置で鎖骨のちょっと下くらいの部分と腕の付け根に強烈な激痛が走り寝起きがままならなくなった。また激痛の後は息が激しくなり、歩行にも支障をきたすようになった。それでも1週間はリハビリを続けた。
リハビリテーション科でのリハビリは、ホット枕みたいな3kgくらいの重たいものを
45分左肩に乗せ、それからマッサージと可動範囲の拡大をするため筋肉を伸ばすものが基本であったが、診療台に寝起きする時とホット枕みたいなものを肩に乗せ時間が経つにつれ左胸の鎖骨ちょっと下くらいと腕の付け根が痛みだしリハビリができない状態となり3/30理学療法士の指示で1週間リハビリを休止し安静。
1週間の安静で激痛は少し改善。
安静1週間後となる4/9主治医に診察。軽い肩鎖関節脱臼の可能性があると言われ○大付属病院整形外科へ紹介してもらう。
4/10○大付属病院整形外科初診にて20枚のレントゲン撮影。診断はリハビリ不足。
肩専門外来を受けるよう指示され、専門外来日4/12に専門医に診察してもらう。
レントゲン4枚撮影。診断は肩鎖関節脱臼と言われたが軽度なので手術はしない。
あきらかにリハビリ不足。「痛いから動かさない。動かさないから痛くなると悪循環に入っている」と診断。リハビリをもっとするよう言われる。
しかしMRIと関節造影検査を受けるようにも言われた。
リハビリ不足なのになぜMRIと関節造影検査?
と私が思ったので訪ねてみると
筋が切れている場合もあるので検査するとのことでしたが
「ギルバート症候群で関節造影検査の副作用を気にするのなら
MRIを受けてもらってその結果を見てから検査」とトーンダウン
「筋が切れていてもリハビリするのですか?」という問いに対しては
切れていてもリハビリはするように言われた。
現在MRI検査待ち。
リハビリは整骨院に変え日曜日を除く毎日低周波治療、マイクロ波による肩の温め、超音波によるマッサージなどのリハビリを受け、自分で可動範囲の拡大と筋力アップを行っています。
【相談・質問】
基本的にリハビリ不足との診断なのにMRIと関節造影検査を受ける必要性をあまり感じてません。レントゲンも計24枚も撮られましたが専門医が見ていたのはたったの
2枚。(カーテン越しに中の様子を見ていたのですがほかのレントゲンは見ていなかったです。)緊急性もないみたいでMRIは3ヶ月くらい予約でいっぱいで待つかもしれないということだったので過剰検査のような気がしますが本当に必要なのでしょうか?診断ミスなどで後にいろいろ言われないようにするために念のため検査するような気がします。
「筋が切れていたら内出血があるのでわかる」と整骨医は言いますし、リハビリで筋を切られたとしたら医療事故ということになってしまいますしリハビリで筋を切ることはないと思うのですが?しかも最近激痛は緩和しつつあります。
非常にお答えにくい質問と思いますがよろしくお願い致します。
それからリハビリは主治医と理学療法士の指示に従い激痛が走るのも我慢して
やってきましたがリハビリ不足と言われショックです。
少々の痛みは我慢できても息の詰まるほどの激痛には数ヶ月続くようでしたら耐えられません。リハビリとはこんなものなのでしょうか?しかも何時までこの痛みが続くのか教えてください。よろしくお願い致します。


[tomos]

 がんばって長文を書いて頂きましたが、肩甲骨のどの部位を骨折されたのかよくわからないのですが・・・。
 一般的に肩甲骨骨折で手術をすることは希で、保存的治療になるケースが多いように思います。おおむね3週間ほど三角巾やストッキネット、装具などで肩を安静にし、その後「振り子運動」などの軽いリハビリから開始しています。温熱療法(ホットパック)も併用しています。経験上、肩のリハビリには何ヶ月もかかることが多く(1年かかった患者さんもいました)、リハビリで痛みが出るようでしたら無理をせずにマイペースでしていただいています。
 MRI検査をする予定だそうですが、これはおそらく腱板断裂を合併していないかどうかを調べるためだと思います。30歳代では腱板に加齢変化がまだ少なく、肩甲骨骨折に伴って腱板を断裂することは比較的少ないと思いますが、頑固な痛みが続いているようですから念のために調べるのでしょう。
<参考> 腱板に関して: 肩関節は骨同士が軟骨で接する「関節面」が小さく、腱板と呼ばれるベルトのような組織が上腕骨の頭の大部分を覆っています。腕を持ち上げて万歳の状態にすると、腱板は肩峰(肩甲骨の最外側)や靱帯からなる「アーチ」の下に潜り込む仕組みになっています。その「アーチ」と腱板の間には「肩峰下滑液包」(SAB)という潤滑液的なクッションのような組織もあります。中高年になるとこの腱板が加齢に伴い弾力性が無くなって脆くなり、使い傷みや外傷で断裂することがあります。
 肩鎖関節脱臼も合併されているようですが、脱臼の程度が軽いようでしたら保存的治療が一般的です。

(Apr/15/2001)

コウノスケ [01年 1月 08日 (月) 19時 09分] 埼玉県在住、19歳、男性
身長 172cm、体重 54kg、職業:大学一年
【スポーツ歴】
小、中学時代は野球。高校はバスケット。現在はサークルのような形でバスケット、ソフトボール、サッカーなどをやっています。運動は大好きです。
【既往歴】
特になし
【合併症等】
今のところは無し
【現病歴】
実は私は母親です。入院中の息子のことで伺いたいと思います。
息子は19歳の大学生で、昨年12月24日の夜、デリバリーのアルバイト中にバイクに乗っていて乗用車と衝突してしまい右大腿部開放骨折という大怪我をしてしまいました。
救急車で運ばれ、その日のうちに患部を洗浄し針金と10キログラムの重りで引っ張るというところまでの手術をし、28日に骨の中に金属の棒を差し込み腿の上部、下部をそれぞれ2本ずつのボルトで留めるという手術を受けました。
その他、頭部挫創ということで頭に大きなこぶと裂傷(なん針かはわかりませんが5センチくらいの傷で縫っています)。
幸い脳と内臓には損傷は無かったようですが、あちこち打撲しているので顎、手首、手のひら、指の付け根などかなり痛がっております。
【医療機関】
川口市立医療センター   救命科
【診療内容】
現病歴欄に書いた事と重複するかもしれませんが
右大腿部開放骨折。頭部挫創です。
昨日(1月7日)から松葉杖を使って良いという事になったようなのですが、今日病院に行きましたら、来週抜糸がすんで傷の状態がよければもう退院と言う話が出ていてビックリしました。
連休中なので先生とではなく看護婦さんをとおしての話で、先生からは明日直接お話を伺える事になっているのですが、そんなに早く退院して大丈夫なものなのでしょうか?
2度の手術のときの説明ではまず骨髄炎の心配のこと。大腿部を骨折している場合は多少なりとも膝も痛めている場合が多いと言う事。(膝の細かいチェックはまだしていません)リハビリにはかなりの時間を要すると言う事。いちばん順調にいっても完治するのは初夏くらいにはなるだろうとのこと。万が一骨髄炎などを併発した場合は完治するのは果てしなく時間がかかるということ、等などでした。
まだ微熱が出たりしていますが〈37.0〜37.5度くらい)抗生剤の飲み薬も明日でいちおう終わりと言う事です。
リハビリは午前中ベッド上で機械で膝の曲げ伸ばしをする。というところだそうです
【相談・質問】
まだ微熱もあったり、右足をついてはいけないといわれたり、あちこち痛みのあるところがあったり、リハビリも始めたばかりだったりするのにそんなに早く退院させてだいじょうぶなのですか?
骨髄炎の心配と言うのはどのくらいになればクリアということになるのですか?
入院している病院は埼玉県南部の中核医療施設ということで、早期に転院や退院をしてくださいということもあるようなのですが、家族としてはもう少し落ちつくまでは入院していてくれた方が安心です。
もし無理なら他の病院の整形外科のほうに転院できるよう、紹介してくださいと先生にお願いするのは無理なのでしょうか?

[tomos]

 息子さんは、大腿骨開放骨折という重傷を負われたようですが、受傷後3週間で松葉杖で歩行できるまで回復されたようで、不幸中の幸いだと存じます。
 退院の許可が出たとのことですが、tomos がもし19歳の若者でしたら、迷わずに退院すると思います。病院というところはけっこう退屈なところで、当然ですがいろいろと規則もあり、携帯電話も使えません。既に松葉杖で移動できるようになった19歳の若者にとっては、これほどつまらない場所はありません。ただ、ご両親が心配されるのも理解できますので、もし本人が「リハビリに専念し規則正しい入院生活を続ける」意向でしたら、主治医の先生に相談すれば、近くの病院の整形外科に紹介状を書いてくださると思います。
 開放骨折後の骨髄炎についてですが、たいていの場合、骨折後数週間以内に症状が現れますが、まれには慢性骨髄炎となり骨折して数年後に症状が出る場合もあり「どのくらいになれば骨髄炎の可能性をクリアできるか?」というのは難しい質問です。ただ、入院していても通院していても「運が悪ければ」骨髄炎になる時はなりますから、その時はその時でまた考えればいいと思います。
 骨折にはそれぞれのドラマがあり、非常にまじめに治療していた人が骨髄炎になったり、かと思えば、まだ歩行の許可をしていないうちに歩きだした人が案外調子よく治ったり、いろいろとあるものです。でも主治医の指示には従うように、息子さんにはお話ししてください。

(Jan/8/2001)

sasaoka tetu [00年 4月 28日 (金) 8時 59分]

 抜釘後の飲酒についてのQ&Aは読ませて頂きました。同じような質問で申し訳ないのですが、

1.44歳
2.男
3.168cm、66kg
4.会社員事務
5.スキー暦は40年、この頃はシーズン4〜5回程度
6.急性膵炎で10日入院
7.高血圧でノルバスク5mg1錠/日を服用
8.3月18日スキーにて転倒、右下腿骨折。3月19日観血的整復固定、ギブスシーネ固定施行。プレートを釘7本で固定。
9.抜糸後ギブス固定、岩手医科大学付属病院から秋田赤十字病院に転院。どちらからも特別食事療法等の説明はなかった。
10.秋田赤十字病院整形外科に2週間毎に通院。筋肉が落ちてきて4月25日に3つめのギブスに取替える。

 治りが遅い様に思っていたところ、飲酒は回復力を半減させる、との話をきいて愕然としました。カルシウムを多くとるようにし、固定式自転車やダンベル運動などで回復を早めようと努力していますが、退院後毎日お酒は飲んでおりました。日に2〜3合ぐらいですけど。自分の無知を恥じ入り、26日からは一滴も呑んでおりませんが、実際のところ回復力が低下するものなのでしょう?宜しくお願いいたします。

[tomos]

 飲酒が骨折の治りに及ぼす影響についてのご質問です。
 お酒は百薬の長と言われ、少量であれば循環器系の疾患のリスクを減らすと言われています。でも過ぎたるは及ばざるがごとしで、過度のアルコール摂取は胃や腸の粘膜を荒らし、カルシウムの吸収を妨げます。またアルコールの利尿作用のため、カルシウムが尿とともに余分に排泄されることにもなります。さらに、アルコールという毒素を肝臓で代謝するには、そのための酵素が必要ですが、多量のアルコール摂取はタンパク質からできている酵素を浪費し、結果として身体に必要なタンパク質が欠乏することにもなります。やはり、お酒はほどほどにしたほうがいいようです。
 男性は女性に比べて骨粗鬆症になりにくいですが、大酒飲みは若い男性でも骨粗鬆症になることがあります。
 お酒は、ほどほどに! 休肝日を!


(May/23/2000)

ナナ [00年 1月 02日 (日) 11時 35分]

 あけましておめでとうございます。はじめまして、私、ナナといいます。ひとつ教えていただきたく、メールしました。
 16才の男子で、昨年9月、柔道の最中に、1本の指の第2関節を脱臼(開放)し、近くの病院で、診察、手術されました。現在、腫れ(関節周囲のみ)が残り、皮膚の色も、軽く青紫色です。少々の圧痛、しびれがあります。この腫れは、何ですか?骨ですか、それとも、周囲の組織ですか?なくなるのでしょうか?それは、いつ頃ですか?将来、機能障害は起きるのでしょうか?
 是非、教えてください。よろしくお願いします。

[tomos]

 先日、女子柔道の「やわらちゃん」田村選手が左の小指のPIP関節(指の根元から一つ目の関節)を脱臼骨折(剥離骨折を伴う)していましたが、ご相談の16歳男子さんは左中指のPIP関節を開放脱臼(剥離骨片を伴う)されたようです。
 脱臼は関節包(関節の袋)や靱帯が切れて関節がはずれてしまうことですが、開放脱臼は更にずれた骨が皮膚を突き破って骨が皮膚の外にむき出しになってしまった脱臼をいいます。
 このような脱臼骨折に対して我々は、感染(化膿)が一番怖いですから、まず創部をきれいに洗浄・消毒します。そして脱臼を整復した後、掌側板(てのひら側の靱帯)や関節包(関節の袋)を可及的に修復(縫合)しますが、16歳男子さんのように掌側板の付着部の剥離骨片を伴う場合は、その骨片を整復固定する操作を行います。最後に皮膚を縫合します。神経や動脈、腱が切れることはあまりありません。
 術後は約3週間シーネ固定(副木固定)した後、関節を動かす運動を始めます。
 外傷によりダメージを受けた関節は線維組織(傷んだ組織を修復するための線維状の組織)ができて瘢痕(はんこん)化し、腫れて固くなります。これが元のように腫れがひき柔らかくなるには数ヶ月要します。開放脱臼は関節にとってはかなりのダメージですから、外傷の程度によっては腫れが治まるまで半年から1年を要することもまれではありません。また、場合によっては、関節の動きが悪い、完全に曲がらない・伸びない、関節に無理をかけると痛む等の機能障害が残ることもあります。

(Jan/13/2000)

Wait [99年 9月 09日 (木) 0時 14分]

 始めまして。4ヶ月前サッカーをしている途中に転び、足首を脱臼骨折しました。そのことで相談があります。
 わたしは、21歳、男、身長163cm、体重58kgで航空自衛隊のパイロットの候補生です。スポーツは、中学でバスケットボール、高校と自衛隊でラグビーをやっていました。昔から骨折を何回もやったことがありましたが、障害が残るのと、入院、手術は今回が初めてです。
 怪我をしたのは4月27日で、右の足首が90度外に向いていました。足首の細い骨が折れ、太いほうも少し折れていたらしく、手術をし、細いのにプレートとボルト数本、太いのにボルト2本入れました。何ヶ月もたち足首は少しずつ回復し、いまでは長距離を走ったり軽くスポーツをしたりしているのですが、親趾(ゆび)の調子がどうもおかしいのです。
 まず、自分の力ではまったく上に上がらない。そのかわり、足首を下に向けるとすごい強さで上に上がり、逆に足首を上げると親趾が下がります。下がる強さはさほど強くないのですが、歩くと足首が上がるために、地面によって下に行こうとする親趾を無理やり上げようとするため足の裏のすじが痛くなるときがあります。
 手術前は、親趾は自分の力で上に上げることは出来ました。主治医の話では「手術のため癒着した」ということです。切開した場所は、外側はくるぶしの真上をまっすぐに15cmほど、内側は内のくるぶし(?)のかかと側に三日月型に12cmほどです。この癒着は手術ではがれるそうですが、その後4ヶ月以上動かしていない親趾がいまでも動くかどうか心配です。それと、いつ手術をするのがいいのかよく話してもらえません。
 私はボルトを抜くときにはがしてもらおうと思っているのですが、それについても心配があります。私は次の年明けあたりから飛行訓練が始まります。そうなってしまうともう4年ほどまったく暇がなくなってしまい、入院できる機会がなくなってしまいます。主治医はボルトをつけている期間は通常2年と言っていました。しかしそれまで待つと、4年の間親趾の障害を持ったまま訓練をしなければならなくなります。今はまだ飛んでないため、それがどれだけ訓練に支障をきたすかわかりませんが、出来たら避けたいです。私が受けていたリハビリの先生の話では、半年ほどでボルトをとった例もあると聞きました。
 そこでお聞きしたいのですが、実際半年ほどでとることは出来るのでしょうか?また、早く取った場合、2年間つけているのより障害が残ったりするのでしょうか。本来ならちゃんと主治医に話すべきなのですが、なかなかそのことを相談することが出来ないためこのメールを書かせて頂きました。よろしくお願いします。

[tomos]

 下腿骨折や足関節の骨折の後、足趾が背屈(上にあがること)しにくくなることが時々あります。Waitさんの場合は、筋肉や腱が癒着して拘縮したために生じたとのことですが、そのような場合、母趾だけでなく他の足趾が同時に変形・拘縮することもよくあります。リハビリ等でもよくならなければ、手術で癒着を剥離したり、腱を切離したりします。
 また骨折時や麻酔の後で下肢が動かない状態では、下肢が外旋といって外側にまわった(開いた状態)になり、ギプスやベッドと骨の間で腓骨神経が圧迫され、しばらくのあいだ足首や足趾が上に上がらなくなることが時々あります(これを腓骨神経麻痺といいます)。この場合は足の甲の部分のしびれも伴います。たいていの場合、この腓骨神経麻痺は数ヶ月で回復します。
 抜釘に関してですが、Waitさんのような足関節の果部骨折では、術後6カ月ぐらいで抜釘することもよくあります。骨折部の骨癒合が良好であれば6カ月で抜釘しても構わないと tomos は思います。

(Dec/8/1999)

みずほ [99年 5月 24日 (月) 7時 57分]

 6歳になる娘のことでご相談いたします。どうぞ宜しくお願いいたします。
 先日、娘が滑り台で遊んでいたところ、階段を踏み外し2.5mくらいのところから転落、左脚の股関節を後方脱臼骨折してしまいました。総合病院でレントゲンを撮ったところ、骨折部分は寛骨臼でほとんど転位がなく、ひびが入ったような感じでした。すぐに入院し現在膝の上に鋼線を刺入して直達牽引を行っています。今、受傷後6日程たちましたが脱臼もほぼ元の位置に戻り、痛みもかなり収まってきている様子です。
 主治医の話ではこのまま後1週間ほど牽引を続け、その後も手術はせずに保存的に治療をすすめるとのことです。やはり牽引が終わったらギプスで固定するんでしょうか。しかし場所が場所なだけにどのように固定するんでしょうか?完治するまでに半年くらいは見ておいてくださいとのことですが、来年は小学校に入学しますので後遺症が残らないか心配です。
 将来的に歩くのに支障が出たり、関節症になったり、痛みが出たりしないか不安になっております。今後の治療法や注意しなければいけないことなどなんでも結構です。どうぞご教授ください。

[tomos]

 tomos は小児の外傷性股関節脱臼の経験がありませんが、6歳の娘さんは幸い骨折の転位もなく、脱臼の整復も良好とのことです。成人のこのような外傷性股関節脱臼の場合、受傷後(牽引を含め)約6〜8週間は床上安静とし、その後松葉杖で歩行を開始します。ギプス固定(胴〜患肢の足まで)をすることはあまりありません。6歳の小児の場合、3〜4週間も安静にすれば十分なように思います。
 成人の外傷性股関節脱臼の場合、大腿骨頭の血流が悪くなり骨頭が壊死に陥る「大腿骨頭壊死」や関節の損傷や不適合による「変形性関節症」をきたすことがあり、受傷後長期にわたる経過観察が必要です。小児の場合も基本的に同じですが、成人の場合に比べ成長に伴う自己矯正能がありその点はやや安心です。
 活発に動き回る、娘さんのような年頃のお子さんの場合、軽微な大腿骨頭の外傷(たとえば飛び跳ねて傷める等)で大腿骨頭が壊死になり、数年にわたる治療を要する場合があります。これを「ペルテス病」といいますが、この年頃では骨頭を栄養する血管が損傷を受けやすいのが原因だと言われています。この「ペルテス病」も軽症〜重症があり様々ですが、重症の場合、骨頭に変形を残し将来変形性関節症になることがあります。
 娘さんが一種のペルテス病のような大腿骨頭壊死を生じるかどうかは、初期ではMRI検査で、骨頭が変形をきたせばレントゲン検査でわかります。
 何事もかなった場合、おそらく半年後には娘さんは元気に飛び回っていることでしょう。

(May/27/1999)

D.K. [99年 2月 05日 (金) 13時 36分]

 はじめまして。整形外科でサーチをたどって来ました。よろしければ、わたしも質問させてください。
 インフルエンザにかかってひどく咳をしたのですが、そのせいか、右の下のほうの肋骨のほうがしくしく痛みます。ほっとけば治るだろうと思っていたのですが、三週間たっても、かえって痛みはひどくなってるようです。
 咳ぐらいで肋骨を傷めることがあるのでしょうか。こういうのは病院に行くべきなのでしょうか。なんか中途半端な痛みで、病院に行くふんぎりもつかなくて…。
 28歳男、スポーツ歴・病歴は何もなしです。よろしくお願いします。

[tomos]

 咳で肋骨を骨折する患者さんは時々いらっしゃいます。「右の下のほうの肋骨」とのことで、骨でなくて軟骨(肋軟骨)や筋肉を傷められたのかもしれません。
 この程度の肋骨骨折や肋軟骨損傷は自然に治りますが、除痛のため肋骨骨折用のバンドを巻いて様子を見ていただいています。たいてい、1ヶ月もすると痛みが楽になります。バンドがない場合は、腹巻きや腰痛用のコルセットなどを患部に巻いても効果があると思います。

(Feb/7/1999)

ミナミ [99年 2月 03日 (水) 22時 42分]

 前略はじめまして。私の子供の幼稚園のお友達(男の子)の事なのですが、今日「幼稚園の豆まきの際、つきやまから落ちて足首とひざの間を斜めに骨折した」そうです。
 幼稚園の裏の大学病院にすぐに運ばれたそうですが、今日の手当ては添え木を当てただけに終わったそうです。「ギプスで固定するのは腫れがひいた一週間後」と言われたそうです。現在は痛み止めを飲んでいるそうです。ただ、薬はほとんど効かず「痛い」と言って泣いているとの事で、なんだかこちらの方が気の毒になり相談致しました。
 子供の骨折の治療と言うものは、こういうものなのでしょうか?素人考えでは、すぐにギプスで固定した方が良い様に思えるのですが・・・。また痛みは徐々にひいてくるものでしょうか?痛み止めを飲み続けるしかないのでしょうか?
 ご解答宜しくお願い申し上げます。

[tomos]

 ご相談のような(5〜6歳の)小児の下腿骨幹部の骨折は、手術することなく牽引・ギプス固定等で治します。小児は治癒能力が旺盛で、多少ずれたり曲がったりして骨がつながっても、成長に伴って自然に矯正されます。ただし、内・外向きに捻れて骨がつながると矯正されないので、そうならないように注意が必要です。
 小児の骨幹部の骨折が治ると、その骨は過成長といって健側に比べてかえって骨の長さが長くなってしまいます。そのため大腿骨や下腿の骨折では、骨折を完全には整復せずに少し短めに骨癒合させて、将来的に両脚が同じ長さになるようにしています。
 ご相談の園児の下腿骨折(斜めに折れている)がどのような状態なのかは不明ですが、おそらく骨折部は大幅には転位(ずれること)していないのでしょう。ギプスを巻かなくても、じっと寝かせているだけでも骨は癒合します。ギプスを巻くのは、骨折部を安静に保ち、園児の痛みを和らげ、ご両親がこの園児の介護をしやすくする等の効果があります。ただし、ギプス固定による合併症、たとえばギプスがきつすぎて下肢の血液の循環障害・神経障害等が生じることもありますので、受傷直後にはギプスを巻かない医師もいます。
 骨折直後は痛みがあるのは当然ですが、腫れが引く数日後には痛みが軽減し、ギプス固定後はかなり楽になると思います。

(Feb/7/1999)

M.S. [99年 2月 03日 (水) 22時 15分]

 はじめまして。整形外科でサーチしてHPにたどり着きました。骨折の事で悩んでるのですが質問してもよろしいでしょうか?
 現在アメリカに住んでいまして今年いっぱいで帰国する予定なんですが、一ヶ月前に小指につながっている手の平の小指の関節に近い部分を骨折しまして、保険に入ってなかった為、予算の都合もあり釘入れの手術とか無しで治療したのですが、かなり曲がってくっついてしまいました。
 
(これは治療前の写真のコピーですが、治療後のレントゲンを撮った時も殆ど同じかんじです。)
 そこで質問なんですが、このように曲がってくっ付いた骨は後からでも手術でもっとまっすぐにする事は出来るのでしょうか?もし出来るのであれば、日本に帰った後治療したいと思ってまして、場合によっては早く帰国することも考えてる状態です(できれば今年の終わりまで滞在したいです)。それとも もう手遅れでしょうか?どうか良いアドバイスを御願いいたします。
 よろしくお願いいたします。

[tomos]

 M.S.さんの骨折は、ボクサーによく起こる骨折なので「ボクサー骨折」と呼ばれています。手を握った状態で殴ったり何かにぶつけたりすると、第5中手骨の頸部が骨折し、レントゲン写真のように中手骨の頭がお辞儀したように曲がってしまいます。
 治療はドクターにより様々でしょうが、tomos はレントゲン写真のようなケースは、指の付け根の関節とその隣の関節を直角に曲げた状態でシーネ固定(当て木固定)する治療法を選択します。たいていの場合はこれで骨折部が整復され、薬3週間で骨折部がずれなくなりシーネ固定をはずします。約2ヶ月もすれば骨癒合します。(保存的治療)
 このような保存的治療で整復が得られない場合や骨折がひどい場合は、経皮的ピンニング術観血的整復固定術を行うこともしばしばあります。
 M.S.さんのようにボクサー骨折が変形してつながった場合ですが、指の付け根の関節(MP関節)は可動範囲が大きく、ほとんどのケースでは無症状で日常生活に支障がなく、何ら治療を要しません。骨折が捻れた状態で変形してつながってしまい指を曲げると小指と薬指が重なる場合は、変形を矯正する手術をする場合はありますが、そうでない場合は放置しても大丈夫です。ただし外見上、握り拳を作った時に小指の付け根の骨が出っ張らなくなります。

(Feb/6/1999)

のり [99年 1月 13日 (水) 9時 53分]

 29歳の会社員の男性です。
 10月18日に自転車での転倒により左肩を強打し、左肩の鎖骨を骨折しました。その日のうちに整形外科に行き、バンドによる固定治療とレントゲン撮影による診察を行いました。5週間後にバンドによる固定治療を終了し、自宅でのリハビリを行うことになりました。
 その後、2週間後、それから3週間後の2回レントゲン撮影のため通院しました。受傷から10週間が経過し、医者に「スノーボードをやっても良いか」と質問したところ、「まだ他の人より骨が弱い状態なので転ばないように気を付けてやるなら良いでしょう」と許可をもらいましたが、その言葉が気に掛かりその後約3週間経ちますが、ちょっと躊躇しています。
 そこで一般的で構わないのですが骨折後、骨が完全に癒合もしくはある程度の衝撃を受けても問題ない程度に回復するまでにはどの程度の期間が必要なのでしょうか。宜しくお願い致します。

[tomos]

 鎖骨骨折がある程度治った状態で再び転倒し、再骨折した患者さんが今までに何名かいらっしゃいました。
 最近も、他院で昨年5月に鎖骨骨折の手術を受け、年末に抜釘術(骨折の固定に用いた金属を除去する手術)を受けた21歳の男性がお正月にスノーボ−ドで転倒、鎖骨を再骨折して当院へ来院されました。
 骨折した鎖骨が「しっかりする」までの期間は、骨折の状態、年齢、治療法、持病などに左右されますが、のりさんのように経過が順調であっても、成人男性の場合は1年間ぐらいかかると考えられます。その間は転倒するおそれのあるスポーツ・職業の患者さんは注意した方がいいでしょう。

(Jan/22/1998)

YM [98年 10月 14日 (水) 18時 12分]

 3月に腓骨筋腱脱臼について質問したものです。その後、5月に手術を受けました。
 私の場合は骨をずらす方法でははく、足首の靭帯が機能していなかったため靭帯の再建手術をし、腓骨筋腱が脱臼しないように壁を作ったようです。また、靭帯でやぶれてしまった腓骨筋腱をおおっている膜を縫いなおしました。2ヶ月の松葉杖+装具で通常歩行までかなり時間がかかりましたが、現在はほぼ元通りの状態まで回復しました。まだ足首の固さが残っていますが、スキーもOKとなりました。ありがとうございました。
 さて今回は、私の友人のケガの件で質問させていただきます。
 私の友人は29歳の女性です。今年の2月22日にスキーによる転倒で右膝下1/3の部分をら旋骨折、腓骨は粉砕骨折しました。3月4日に手術をし、髄内釘を入れており、膝下と足首の部分をボルトが入っています。約3ヶ月入院し、現在は仕事にも復帰しております。2ヶ月に1回の割り合いで通院しています。

現在の症状は
 1)「足首のしびれがとれない」。かなりしびれが強いようです。(ボルトのせいでしょうか?)
 2)ここ1ヶ月ぐらいで、膝下部分が出っ張ってきた。出っ張りの部分は固いです。
 3)レントゲン写真を見ると、腓骨がまだついていない。
 4)右側を下にして寝ると痛い。(主治医は「ほっとけばそのうち治る」と言っています。)
 5)主治医からは「スポーツを初めてもいい」と言われたが、痛くて走ることができません。主治医が途中で代わってしまい、現在の主治医は手術をした先生ではありません。手術前に聞いていたことと異なることが多くて不安を感じているようです。

そこで質問です。
 A)通常、骨折部分がかなり下の方でも髄内釘をいれるのでしょうか?「抜釘する際、再骨折する可能性がある」と現在の主治医に言われたそうです。(主治医によると「使用している髄内釘は現在生産中止になっているもので折れやすい」ということです。)
 B)また元のようにスポーツができるようになるのでしょうか?思うように回復せず不安があるようです。
 どうぞよろしくおねがいします。

[tomos]

 腓骨筋腱脱臼の治療が順調にいき、よかったですね。
 さて、ご相談の件ですが、
 A)大腿骨、脛骨などの長管骨(管状になった細長い骨)の骨幹部(細長い骨の中央)骨折には、以前より髄内釘による治療が行われています。髄内釘は骨の管の中に入れる金属の棒のようなものです。この髄内釘固定は、脚の骨折の場合、早期に荷重(脚に体重をかけること)歩行ができ、手術後のギプス固定も不要などの長所があります。しかし、単に髄内釘を入れるのみでは髄内釘を軸に骨が回ることがあり(これを回旋といいます)、骨折の固定が不安定です。
 そこでこれを解決するために髄内釘の上部と下部をネジ(スクリュー)で骨と固定し、骨折部が動かないようにする方法が考案されました。ここで用いられるスクリューを「横止めスクリュー」と呼んでします。この横止めスクリューを用いる髄内釘のもう一つのメリットは、これが長管骨の中央部以外の少し端の方の骨折にも応用できることです。
 YM さんの友人に使用された髄内釘はおそらく米国のA社製「ティビアル・ネイル」で、これはその形状から「抜釘の時に脛骨にヒビがいくことがある」と我々の業界ではウワサになっていました。現在は製造が中止され、改良型になっています。このネイルは下部が前方に少し曲がっていて、抜釘時このネイルを膝のところから抜くときに「このネイルの下部が脛骨の前面にあたって骨折を起こしやすい」そうです。tomos も以前1例このネイルを抜釘しましたが、この時は骨折を起こさずにうまく抜釘できました。
 B)骨折が治れば、たいてい元のようにまたスポーツができるようになります。
 1)「足首のしびれ?」は横止めスクリューが骨から少し飛び出ているせいでしょうか。特に問題ないと思いますが。
 2)「膝下部分の出っ張り」は髄内釘を入れた入り口の部分でしょう。特に問題ありません。
 3)、4)腓骨はその足首に近いところが折れた場合は、きれいにつながらないと後々足関節に問題が残りますが、それ以外の部分の骨折では、もし骨がつながらなくてもあまり問題になりません。体重は主に脛骨が支えるからです。「右膝を下にして寝ると痛い」のはこの腓骨の部分の痛みでは?
 5)スポーツの許可がでたそうですが、なにも走るのだけがスポーツではありません。下肢の骨折のリハビリを兼ねて、スイミングや水中ウォークをするといいと思います。これらは浮力のため下肢にかかる体重が少なく、また水の負荷で十分な運動ができます。


(Oct/21/1998)


MINT [98年 10月 14日 (水) 12時 17分]

 40才の女性会社員です。大腿骨骨頭壊死の保存的治療の期間について教えてください。
 私は2年前の8月に左大腿骨頸部骨折(労災)をし、接合手術を受けました。骨折は順調に治りましたが、その2ヶ月後に MRI で骨頭壊死が見つかりました。そのため、免荷装具をつけて骨頭をつぶさないようしながら、自然治癒を待つことになりました。怪我から半年間は壊死の面積は広がり、その後少しづつ縮小してきました。しかしそれも今年の3月からは頭打ち状態で、まだ壊死は残っています。
 私の骨壊死は当初からX線には全く写らず、MRIでのみ確認できます。骨頭の上部に2カ所、下方に2〜3カ所、パンを指でほじくったように見える壊死で、痛みは全くありません。
 2年を過ぎた今年の8月で装具をはずして、1本松葉杖に変わりましたが、杖を使った歩行のままでは専門職である私の仕事も制限されています。
 現在通院している私の病院では「症例もなく、これから先どれくらい時間がかかるのかわからず、MRIで確認していく他にないので、当面免荷は継続する」ということです。なお私は同年代より骨塩量が20%ほど低く、骨は弱いと言われました。
 これから先の治癒の目途など、症例がありましたらご紹介ください。よろしくお願いします。

[tomos]

 大腿骨頭壊死については、すでに手術説明書の「大腿骨頭壊死に対する人工骨頭置換術」、Q&Aの「大腿骨頭壊死の男性」で説明しています。
 MINT さんは外傷(大腿骨頸部骨折)後に大腿骨頭壊死になったそうですが、これは「MRI検査で判明し、レントゲンではわからない程度」だということです。こういった症例は、MRIがまだ発明されていなかった昔ならばおそらくなかなか診断されなかったでしょう。
 tomos も大腿骨頸部骨折の受傷後半年から1年経過した患者さんが骨頭壊死になり、レントゲン上も骨が潰れてきてがっかりした経験が何回かあります(結局、人工骨頭の手術をしました)。しかし、受傷から2年以上を経過していて、痛みがなくレントゲンでもわからない程度の壊死であれば、なるべく股関節に負担をかけないようにしつつも、もう免荷(脚に体重をかけないようにすること)する必要はないように思われます。骨頭壊死部が自然に再生されるには受傷後数年が必要ですが、すでに2年も経過していれば、たとえ患肢を確実に免荷していても壊死部の潰れるところは潰れ、レントゲン検査でそれがわかっているはずです。なお、「レントゲン検査で coin-like lesion (島状の骨硬化)を示す例は、予後良好で、放置しても悪化することはない」そうです。
 なお MINT さんはまだ40歳であるにもかかわらず骨塩量が同年代の約80%だということです。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)がこれ以上悪化しないようにし、また骨頭壊死の治りをよくするには、カルシウム(乳製品、豆類など)、ビタミンD(魚・椎茸など)、ビタミンK(納豆など)の多く含まれる食物を多く摂取しましょう。

(Oct/19/1998)


NANAE [98年 10月 10日 (土) 21時 30分]

 先生、はじめまして29才女、157cm45kスポーツ暦は無です。
 私は6月中旬に2階バルコニーからあやまって転落し、背骨を圧迫骨折して手術しました。アメリカでの事故だったので必然的にアメリカの病院でうけました。腰より少し上の部分の背骨がクラッシュしたので、フェイクを入れるOPをしました。左の横腹から上に向って背骨まで切開してあります。幸い神経は無事だったので下半身不髄等にはならずに、9月14日にようやくコルセットがはずれゆっくり歩けるようになりました。
 しかし驚いたことに、体重が何も変わっていないのに下腹だけが(とくに左側)ポコッと出っ張って大変不自然な体型になってしまいました。コレは何の影響なのでしょうか?治るのでしょうか?腹筋が弱くなっているのかと思い運動も毎日してるのですが・・。又、左の腰から太股にかけての皮膚の神経が痺れて治りません。担当の医師は「OPの際、左の横腹を通っている太い神経を刺激した為」と言っていましたが、外国の先生なので詳しい説明がわかりません。
 良きアドバイスをお待ちしております。

[tomos]

 背骨は、上部の胸椎は12個、下部の腰椎は5個の椎体(円柱形をしている)と呼ばれる骨が縦につながり、大黒柱になっています。この大黒柱の後方には脊柱管と呼ばれる脊髄(脳につながる大事な神経)が通るための縦に貫くトンネル構造があります。
 NANAE さんはアメリカ在住中に高所から転落し、胸椎の下の方または腰椎の上の方の椎体が衝撃で押しつぶされたと考えられます(圧迫骨折といいます)。幸い脊柱管をとおる脊髄や神経は無事だったようで、不幸中の幸いでしたね。
 アメリカで手術を受けられフェイク(偽物)を入れたとのことですが、文面から察して、おそらくつぶれた椎体に対して人工椎体を入れるか何らかのプレートやネジで固定する手術を受けられたのでしょう。
 「手術後、左下腹が出っ張り、左腰部〜大腿のしびれが残存している」とのことですが、これは担当の医師も認めているとおり、手術操作により横腹を通る神経(腸骨下腹神経、腸骨鼠経神経)が損傷したためと思われます。シット・アップという腹筋のトレーニング(仰向けに寝た状態で膝を少し曲げ、両手は頭の後ろにくみ、頭〜背中を持ち上げておへそを覗くようにする)するときに、正常ではおへそは全く動きませんが、NANAE さんの場合はおへそが右上に動くはずです。これは左下腹の腹筋が効かないためです。 手術後数ヶ月経過を見ても回復しないようであれば、これは後遺症として残ると考えた方がいいでしょう。
 また、受けられた手術では腹筋を切開しているはずですが、切開した腹筋の部分が弱くなり、そこから腸が腹壁からはみ出て盛り上がる「腹壁ヘルニア」が生じることもあります。腹壁ヘルニアであれば医師が診察すればすぐにわかります。

(Oct/18/1998)


NOBU [98年 9月 13日 (日) 5時 40分]

 tomos先生,こんにちは。北京在住の31歳,175cm・77kgの男性です。
 7月15日に内モンゴルの草原でラクダより落ち,右上腕骨顆部を粉砕骨折し,当日内モンゴルの病院にて1本の釘と6本の針金で骨折部を固定する手術をしました。19日に北京の病院に転院し,感染症を防ぐ治療を受け,8月11日に退院しました(感染はおこらなかった)。8月20日(5週間目)になっても激しく折れた部分の骨がくっつかず(隙間がある状態),不安になり8月25日に日本に一時帰国し再検査をしました。
 結果,「体の他の部位の骨をひじに移植,と同時にギプス固定の長期化によるひじ関節の硬直化を直す関節再構成(正確ではないかもしれませんが)の手術が必要」との診断を受け,「もう少し様子を見る」ということで現在北京に戻っています。(10週目あたりで手術予定)
 さて質問は関節の拘縮の程度です。日本の主治医には「おそらくひじは伸びない,ひどい場合には90度のままで日常生活に支障をきたすであろう」と言われました。関節の拘縮を直す手術の内容と日常生活に必要な肘の可動域をお教え下さい。またこの手術は骨移植の時に同時に行なうのがいいのか,それとも骨癒合後リハビリの状況をみて数ヶ月後に必要であればやるということでもいいのでしょうか。
 お忙しい中恐れ入ります。なにとぞよろしくお願いします。

[tomos]

 肘関節の上腕骨側の部分を上腕骨顆部といいます。NOBU さまは、この上腕骨顆部を骨折して粉々になったようです。こういったケースでは、肘関節を構成する骨も骨折していることが多く、手術で元の関節の形状に近いように骨折した骨の断片を整復(元の形にすること)し、プレート・ネジ・鋼線で固定する治療が行われます。
 このような骨折では、骨折の程度、患者の年齢、ギプスの期間などによりますが、肘関節の拘縮(固まって動きにくいこと)が残ることが多くなります。肘が110〜120度ぐらい曲がれば、何とか支障なく日常生活(食事、洗顔、整髪など)をこなせます。しかし肘が90度以下しか曲がらない場合は、患者さまが希望されれば、肘関節授動術という手術を行うことがあります。これは、固まった関節の袋や上腕三頭筋(上腕の後部にあり肘を伸ばす働きがある)の腱をはがしたり、切ったり、延長したりし、同時に肘の曲げ伸ばしの障害になる部分の骨をけずったり、穴を開けたりします。この肘関節授動術は、リハビリ等を続けても結局肘の曲がりが悪かった人に行われます。抜釘術(骨折を固定していた金属をとる手術)の時に同時に行われることが多いです。
 tomos は2年前に15才男性の同様な骨折の手術を経験しました。彼は今でも肘が100度位しか曲がらずリハビリを続けていますが、食事、洗顔にはあまり困っていないようです。余談ですが、彼は2年前はおとなしい(ように見える)中学生でしたが、今は高校2年生で、来院する度に耳や唇に穴を開けてきて tomos を驚かせます。現在、耳に三つ、唇に一つピアス(安全ピンや釘のことも)をしています。あの状態で、学校に行ったり、みなみのアメリカ村を歩いたりしているようです。(耳は見慣れたけど、唇はどうも.....)

(Sep/16/1998)

やばっち [98年 9月 02日 (水) 0時 36分]

 tomos 先生、初めまして。僕は某国立大学の医学部5年生のものです。
 実は、先日行われました整形外科の試験に不合格となってしまいまして、レポートの課題を渡されました。「新鮮骨折の治療」が、その課題で、図書館で調べても新鮮骨折という概念がいまいち分かりません。僕なりに解釈すると、言葉通り骨折してすぐに行う治療のことなのでしょうか。たとえば、「6時間以内においては洗浄後処置をして、開放部を縫合しても感染は生じない。」といったことをまとめればよいのでしょうか?
 提出期限は来週月曜日までです。お忙しいのは百も承知ですが、出来ればよいアドバイスをお願いします。

[tomos]

 ここでは骨折が開放性か否かという問題を除外して説明いたします。
 「新鮮骨折」は、「陳旧性骨折」に対する用語です。陳旧性骨折とは「骨折したときに適切な治療を受けずに『一定の期間』を過ぎ、骨折の骨癒合がいまだ得られないか、あるいは顕著な変形を残し、骨折が治療上まだ問題になる場合」をいいます。なお、レントゲンを撮って昔の骨折の痕跡が判明した場合、何ら治療を要しなくてもこの骨折の痕跡を「陳旧性骨折」と呼ぶ場合もあります。
 この『一定の期間』とは、年齢や骨折部位等で違いますが、成人の場合、受傷後1ヶ月を過ぎれば治療上は陳旧性といえるでしょう。これに対して、成人で受傷後2週間以内であれば多くの場合、治療上は新鮮骨折として扱って問題ないでしょう。ここで「骨折後2週間から1ヶ月の間は新鮮骨折なのか陳旧性骨折なのか」という問題が生じますが、この期間では、手術的に治療する場合は新鮮骨折と同様に治療が可能なことが多く、保存的に治療をする場合は骨折部が転位していてもその整復は得られにくくなります。
 小児の骨折は仮骨形成が早く、多くの場合10日も過ぎれば治療上は陳旧性といえます。成人でも骨盤骨折の手術は受傷後5日位が限度で、それ以降は手術を選択できないと言う意味では陳旧性骨折となります。
 通常の骨折、つまり骨折をしてすぐにそれなりの病院に行き適切な治療を受ければ、その骨折は新鮮骨折です。
 ここで、ご質問の「レポートでどういった事をまとめればいいか?」ですが、新鮮な「単純骨折(非開放骨折)」と「複雑骨折(開放骨折)」のそれぞれについて、応急処置、受傷時の合併症とその治療、骨折の治療(保存的治療・手術的治療)、リハビリなどについて記述すればいいかと思います。
 最後になりましたが、レポートがんばって下さい。

(Sep/3/1998)

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