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〜Aug/1998 骨折・脱臼・抜釘 Q&A ライブラリー

N.I. [98年 8月 09日 (日) 17時 35分]

 年齢35歳。性別、男。身長187cm、体重85kg。会社員。サッカ−。病気、過去・現在ともなし。
 3年前にサッカ−の練習中転倒し左肘を骨折しました。町の病院で治療しギブスを約1カ月しましたが、リハビリ中に腫れがひどくなり痛みもあり別の病院で治療を受けたところ大学病院を紹介されました。
 大学病院での診察結果は「リハビリ中におけるムリが原因で内出血し、その血液が軟骨になる」というイショセイコッカ(異所性骨化)であると診断されました(関節の隙間がない)。手術しましたが、現在では両手で洗顔出来ない状況です。
 大学病院は現在通院していませんが、リハビリは現在も行っています。良きアドバイスをお願いします。

[tomos]

 膝の内側側副靱帯の異所性石灰化(骨化)に関してすでに説明いたしましたので、その解説を参考にして下さい。
 受傷後3年も経過しており、またどのような手術を受けられたのかが不明なので、気の利いたアドバイスはできそうもありませんが、まだ異所性石灰化が認められるのであれば、エチドロネート(商品名、ダイドロネル)の服用が有効かもしれません。
 今でも洗顔ができないほどの肘の可動域制限(拘縮)があるそうですが(90度程度しか曲がらない?)、関節授動術といって関節の拘縮の原因となっているところを削る・延ばす・切るなどの操作を加えて、肘関節を110度程度曲がるようにする手術法もあります。受傷後3年も経過しリハビリもそろそろ限界でしょうから、もしこれ以上の治療を望まれるのならば、以前行かれた大学病院で「そういった手術が N.I. さまの肘にも可能かどうか」相談なさるといいでしょう。

(Aug/11/1998)

YH [98年 7月 15日 (水) 15時 37分]

 はじめまして。35歳男性です。
 私は現在、椎間板ヘルニア(L4、L5)の処置としてステロイドの服用を行っています。投薬を開始して1週間が経過しましたが、2日前に転倒し左第4中足骨を骨折してしまいました。現在ギブスにて固定をしておりますが、このような場合ステロイドの投薬は継続してもよろしいのでしょうか?ちなみに骨折に対する処置は、かかりつけ医師とは異なる病院です。
 また継続した場合、骨折に対してもステロイドの効果があるのかどうかお教え下されば幸せです。宜しくお願いいたします。

[tomos]

 腰椎椎間板ヘルニアに対してステロイドを使う目的は、圧迫され痛みや麻痺を生じている神経の腫れを抑えるためです。ただし、何週間も継続して投与することはありません。
 ステロイドを短期間使用する場合は、ステロイドの骨の代謝に対する作用はあまり考えなくていいかと思います。慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患などでステロイドを長期間継続する場合は、その副作用がよく問題になります。
 骨は硬いので変化がないように見えますが、実は常に吸収・形成されて作り直されています。ステロイドは骨代謝に対しては、骨形成を抑制、骨吸収を促進するなどの作用が知られていて、骨を弱くする(骨粗鬆症)働きがあります。臨床的にも、長期間にわたりステロイドを投与する場合は、骨粗鬆症による骨折、大腿骨頭壊死などがよく問題になります。

(Jul/18/1998)

jordan [98年 6月 03日 (水) 18時 59分]

 先生、こんにちは。実は、私の上司が先日交通事故にあいました。大腿骨を粉砕骨折し、詳しい病名はわからないのですが、膝の部分もえぐれるように折れたそうです。
 現在、事故後4ヶ月経過しましたが、2回の手術(大腿部、膝部)を終え一日も早い復帰を目指し地獄のリハビリに励んでいます。リハビリにより膝は95度まで曲がるようになりましたが、まだ癒着が残り、場合によっては膝を曲がるようにする手術が必要になるとのことです。また、大腿部は粉砕した骨をまとめて鋼線で固定する手術をおこないましたが、回復(骨の癒合)のきざしがみえないそうです。
 部下としては、彼にとって最善の方法で、一日も早い回復を祈るのみですが、膝の手術はできれば避けたく、その場合リハビリでカバーできるのか?また、今後のリハビリ方法、見通し等について是非とも良いアドバイスをおねがいします。

[tomos]

 上司の方は大腿骨の重度の開放骨折を受傷されたようですね。
 この治療過程において、まず第一の関門は骨が化膿して骨髄炎にならないようにすることです。ご相談内容にはそのような記載がなく、まずは第一関門はクリアされたようです。
 次の関門は何とかして骨折を癒合させることです。この点に関してはまだ骨癒合の進行が悪いようで、後日、骨移植術などの手術を要する可能性があります。骨移植術でよく行われるのは、腸骨(腰のバンドがあたる部位の骨)から骨を採取して骨折部に移植する方法です。
 最後の関門(目標)は、膝関節の可動域(曲げ伸ばしの範囲)を良くすることです。現在、膝は95度曲がるそうですが、自転車に乗るためには100度は曲がった方がいいでしょう。また、正座は無理にしても日常生活に不自由を感じないためには110度曲がった方がいいと思います。骨移植術を行った場合、術後ギプス固定をしたりして可動域がまた悪くなりますが、骨折を治すことの方が優先するでしょう。可動域が90度に満たない場合、関節受動術といって関節の可動域を改善させる手術を行う場合があります。
 現在できることは、膝の可動域訓練や筋力増強訓練などのリハビリをがんばることです。喫煙は骨癒合を妨げるのでやめましょう。牛乳(カルシウム)や納豆(ビタミンK)、しいたけ(ビタミンD)などは骨癒合を促進します。
 それぞれの骨折にはそれぞれのドラマがあり、今後、上司の方の骨折がどのような筋書きを歩むのかは、かなり不確定な要因に左右される問題です。

(Jun/7/1998)

K.I [98年 6月 02日 (火) 9時 20分]

 はじめまして、よろしくお願い致します。中学2年生(13歳男子)の息子の件です。
 2年前の小学6年生の春に鉄棒より落ちて右手手首(手首関節の2cm位上部)を2本とも骨折しました。入院して手術室に入りましたが、幸いにも切開することなく全身麻酔のうえ手を引っ張ってきれいにはまったということでした。その後3ヶ月位で全治し元気で過ごしていたのですが、去年の冬頃から親指を上に向けた状態で、手首上部の骨折部周辺の骨に沿って長さ約10cm位の部分が痛み、なかなか治りません。
 整形外科のお医者さんに診て頂いたところ、骨折部はきれいに治っているとのことで湿布薬と痛み止めを出してもらい、1週間程で痛みがやわらぎました。しかし皮膚が弱いので湿布をやめたところ、また痛みが元に戻ってしまいました。この痛みは骨折したことと因果関係があるものかお教えいただきたいので、宜しくお願い致します。
 尚現在野球部に入っており右手は毎日良く使います。

[tomos]

 一般的に小児の骨折は治癒能力が旺盛で、手術をしなければ後遺障害が残るような骨折を除き、保存的に(手術をしないで)治療することが多いです。
 前腕骨折の場合も、若木骨折と言って、しなやかな若木が折れるような感じの骨折が多く、徒手整復(手で引っ張ってずれを戻すこと)により変形が直れば、後はギプス固定をして骨癒合を待ちます。骨折部の多少の変形や短縮も成長に伴って自然に矯正されます。
 細長い骨(長管骨)が中央部で骨折した場合、かえって骨の成長が促進され、骨折した脚の長さが健側(骨折しなかった側)よりも長くなるのが一般的です。そのため、大腿や下腿の骨折では、骨折した骨が長くなりすぎて脚長差が残るようなことがないように、骨折部をずらして少し短めに骨癒合させるのが普通です。ただ、長管骨は回旋異常といって捻れが加わった状態で骨癒合すると、それは自然矯正されません。脚の場合、回旋異常が残ると「気をつけ」をしても「片方の脚だけが外(または内)側を向いている」ということが起こり得ます。整形外科医は、回旋異常をきたさないように常に気をつけています。
 これに対して長管骨が関節の近くで折れたときは、長管骨の端部にある骨の成長軟骨が傷んでいないかどうかが問題になります。もし成長軟骨に損傷がある場合は、その後の骨の成長に伴って骨・関節の変形を生じることがあります。
 患者様の場合は、手首の部分の骨折にもかかわらず、最近のレントゲンでは骨折部はきれいに治っていて、幸いにも骨の成長する軟骨の損傷はないようです。昨年からの前腕の痛みは、想像ですが、やはり野球による使いすぎが一番の原因になっているのではないかと思われます。まだ骨折部がリモデリング(作り直されること)される過程で多少骨折部の骨が盛り上がっていて、投球動作に伴い腱とかがこすれて炎症を起こしやすいのでしょう(腱鞘炎)。治療は、まず局所の安静が基本です。思い切って(?)3週間きっちり野球を休んでみましょう。
 将来のことですが、これから徐々に骨折部のリモデリングが進めば、今回のような症状も少しずつ出現しにくくなると思われます。

(Jun/3/1998)

K.I [98年 6月 07日 (日) 22時 07分]

 先日(6月2日)息子の骨折後の腕の痛みについて相談したものです。説明を拝見しまして安心いたしました。息子には「痛みがあるうちは様子をみながら無理をしないように」と言いました。お忙しいところありがとうございました。

[tomos]

微力ながら、お力になれて光栄です。

(Jun/8/1998)

Amokun [98年 5月 16日 (土) 2時 59分]

 交通事故で大腿部の骨を複雑(粉砕)骨折。その後、10カ月余り経過しました。ふとももの骨が8cmくらいない状態で、膝からしたの神経もつながってないらしく痛覚、感覚などありません。
 お医者さんが言うには、「これだけ時間が経過して神経がもどらないと、もうもどらない」とのことです。そのため、その状態(骨がない状態)でなんらかの装具をつけて終わりということです。(そんな状態で足はぶらぶらしたりしないのでしょうか?)もしくは、なんらかの装具で骨を両側から少しずつ伸ばしてつなげる方法もあるそうですが、8cmのばすのには1年くらいかかるそうです。そのため前者の方法を選ぶそうです。
 なにか他に方法はないものなのでしょうか?また、失った神経はもう戻らないのでしょうか?

[tomos]

 電子メールで伺ったところ、骨折されているのは知人の24才の女性(A嬢)で、部位は大腿骨の中央部だそうです。現在も骨折部を創外固定されています。また、骨折部には8cmの骨の欠損があるそうです。
 創外固定とは、「骨折部をはさんだ両側の骨にネジを数本挿入し、骨折部をひっぱって骨折のずれをできるだけ矯正し、支えとなる金属製の支柱(創外固定器といいます)で皮膚の外側から骨折を固定する」方法です。一言でいえば、皮膚の外から「串差し状態」で骨折を固定するのが創外固定です。
 創外固定法は、粉砕骨折(粉々な骨折)のように手術で骨折をつなげられない場合、開放骨折(骨がいったん皮膚の外へとびだした骨折)のように骨折部が感染(化膿すること)しやすく直接手術できない場合、関節部の骨折のように骨折の固定がしにくい場合などによく用いられます。創外固定法は骨折部を直接に切開しないので、骨にダメージを与えず骨折部を切開する手術に比べ骨折の治りを損ないません。
 A嬢は、まだ骨が8cm欠損したままの状態ですが、この治療には、(1)骨移植法、(2)仮骨牽引法による脚延長法、などが考えられます。

(1)骨移植法
 腸骨(腰の横のバンドがあたるところ)、腓骨(スネの外側の細い骨)などから骨を切除してきて骨欠損部に移植します。8cmの骨欠損すべてを埋めるのは無理でも、5cmぐらいなら何とかなりそうです。あと3cmの短縮(脚長差)が残りますが、その程度なら靴の調整で代償できます。
 腓骨を、その骨を養う血管をひものようにつけたまま採取してきて(「血管柄付き」といいます)、骨折部に移植する方法もあります。血管柄は、顕微鏡を見ながら大腿部の血管に吻合(ふんごう、つなげること)します。この方法は、「血管柄付き腓骨移植」といい、血液の通う骨を移植することになり、骨の治りが格段に良くなります。A様のように重度の骨折をし骨折部のダメージが著しい場合は、骨折部の血行が悪い場合が多く、この方法を選択する場合があります。我が国では、奈良医大の整形外科で実施しています。

(2)仮骨牽引法による脚延長法
 Amokun 様の相談の中にある方法です。まず骨折部を脚延長用の創外固定器で固定し、骨折部は数ミリのギャップがある状態にしてやります。数週間後に、レントゲンで薄い骨(仮骨)がそのギャップ部に確認できたら、今度は創外固定器の調整ネジを回して骨折部のギャップを1日に 0.25mm〜0.5mmずつ大きくしてやります。仮骨ができてきたら、少しずつ延長して仮骨を伸ばしていくやり方で、仮骨がしっかりすると丈夫な骨になります。この方法で8cm延長するやり方です。8cmの延長には、やはり1年ぐらいかかりそうです。

 お話では、大腿部の大事な神経(おそらく坐骨神経)も損傷されているそうです。骨が8cm欠損するような重度の骨折でしたから、坐骨神経も断裂したのでしょう。このようなひどい骨折の場合、大きな動脈も損傷して、結果的に脚に血が通わなくなり脚の切断を余儀なくされることがあります。幸い、A嬢の場合は、この最悪の事態だけは避けられたようです。
 損傷した神経を修復するには、神経移植術という方法があります。採取する神経はスネの横にあるような知覚だけを司る細い神経ですが、これを束ねて太くして、神経の欠損部に移植します。ただし、治療がうまくいっても神経が100%回復するということはありません。回復しても30〜60%といったものになると思います。外傷後10ヶ月も経過しているのでしたら、神経の回復は部分的なものになるかもしれません。また、坐骨神経のような脚の中枢部の神経損傷では、神経移植した場合に、神経の過誤支配といって「回復した神経が本来と違う部位を支配する」ことがあります。たとえば、「足のゆびを曲げようとすると意に反して足のゆびが伸びる」というようなことがあります。
 以上は、一般的なお話をさせていただきましたが、A嬢は交通事故の後1カ月半くらい意識のない状態だったそうです。また、事故後しばらく太ももから先のふくらはぎ・足先などに血が通わなくなり、ふくらはぎのあたりの壊死した部分を取り除いたりしたそうです。その上、8カ月くらいの間、MRSAという抗生剤の効かない難治性の細菌が消えなかったりして、けっこう大変な状態だったみたいです。整形外科医というのは、何とかして骨折した骨をつなげようとする習性があります。特に若い患者様の場合には、「骨折した骨を、そのままで終わりに」ということはないと思いますが、脚がかろうじて切断を免れたような今回の骨折の場合は、「このまま装具で」という選択もやむを得ないのかもしれません。(直接診療に携わっていないので、これ以上のコメントは差し控えさせていただきます。)

(May/24/1998)

Nabe [98年 5月 18日 (月) 20時 03分]

 はじめまして、25歳男性です。
 1月25日にバイクで車と衝突事故を起こし、病院に運ばれ、左手首・両足首の打撲と診断されました。その後(約1ヶ月後)、左手の痛みが退かないため、再度診察してもらったところ、舟状骨骨折と診断され、4月22日にボルトによる固定と腸骨からの骨移植の手術を受けました。
 手術後2週間半ほど添え木をし、現在は外しています。その際、担当の医師から自分でリハビリをするように言われ、自分なりに手首を動かすようにしていましたが、左手首の付け根あたりに違和感を感じ、触ってみたところ、骨のような硬い感触がします。右手の同じ場所を触ってみても骨らしい感触はありません。そのために今はなるべく左手を動かさないようにしていますが、このような状態でリハビリをしても大丈夫なのでしょうか?
 よいアドバイスをよろしくお願い致します。

[tomos]

 舟状骨骨折は以前にもお書きしたように、見逃されやすく、また治りにくい骨折です。Nabe様のように骨移植をしてネジで固定することもあります。
 手首の付け根に硬い感触があるとのご指摘ですが、骨移植をしてネジで固定したわけですから、手首の付け根(そこに舟状骨がある)が多少出っ張るのかもしれません。もしご心配なら、手術をしてくださった主治医の先生に、手首の状況を詳しくお話しされて再度診ていただき、直接その先生から説明を受けられるのがいいでしょう。

(May/19/1998)

だいすけ [98年 5月 13日 (水) 19時 32分]

 tomos 先生、よろしくお願いします。
 29歳男です。2月28日にオートバイで単独転倒し、右下腿を開放骨折しました。骨折部が開放していたので、感染症の兆候がない事を待つため一週間安静にして、プレートを入れる手術をしました。3週間で抜糸と同時に退院し、現在に至っています。
 お伺いしたい事は、この場合の一般的な治癒期間とリハビリの仕方についてです。
 先日(術後9周目)レントゲンを撮ったのですが、3週間前に撮ったときと区別がつかないほど変化がなく、くっついていません。 現在通院している病院の先生にも「付きが悪いねえ」といわれています。ちなみに折れた場所はすねのど真ん中で、斜めには折れていないとの事です。リハビリは、「術後6週目から体重の半分の負荷を、9週目から全負荷をかける」ように言われています。しかしレントゲンで見てもまったくくっついていない状態で、全負荷をかけて良いものなのでしょうか。
 実際、負荷を掛けると折れたところに若干違和感があり、怖さも手伝って全負荷をかけられません。このような状態でも、積極的に負荷をかけた方が治りは良くなるのでしょうか。
 良いアドバイスをお願いします。

[tomos]

 開放骨折の骨癒合に関するご質問ですね。
 骨折部が皮膚を突き破って外部と交通した骨折を、開放骨折といいます。開放骨折の場合は、まず骨髄炎(骨に細菌が感染して化膿すること。非常に治りにくい。)にならないかどうかが心配です。まず、事故直後の処置時に、創部を大量の生理的食塩水で洗浄します。その後、骨髄炎を防止するため抗生物質を投与し、骨折部の状態の観察と定期的な血液検査で感染の有無を判断します。そして、感染の兆候がないことを確認して、はじめて手術になるわけです。
 また、開放骨折の場合は筋肉や皮膚もダメージを受けていて骨折部の血流が悪くなっているため、ともすれば骨癒合が遅くなりがちです。潜在性の感染がある場合は、なおさら骨癒合が悪くなります。場合によっては、骨移植術、すなわち腸骨(腰のバンドがあたる骨)などから骨を採取して骨折部に移植する手術を追加することがあります。
 あれやこれで、この種の骨折は治療に長期間を要し、医師も患者も忍耐を強いられるものです。順調にいっても、松葉杖がはずれるまで3〜5ヶ月、 骨癒合が完成するまで約1年半程度はみておいたほうがいいでしょう。また、もしその予定より遅くなっても、あせったり落胆したりしないことが大切です。
 ところで、PTB(Patella Tendon Bearing)装具という長靴のような装具があります。これは、膝蓋骨の下の膝蓋腱のところで体重を受け、骨折部にかかる負荷を少なくする装具です。この種の骨折ではよく用いられます。早期に荷重することにより骨にも適度の刺激が加わり、後療法も早くなり早期に社会復帰ができますので、たいへん重宝な装具です。
 これからの療養についてですが、骨髄炎を併発すると治療に難渋しますから、体の免疫力(抵抗力)を低下させないようにしましょう。喫煙・ストレス・過労なども免疫を低下させます。次に、動かせる関節はよく動かして、筋肉の衰えや関節の拘縮を予防しましょう。また、骨には適度に刺激があった方が治りがいいです。動かすことによって下肢の血行もよくなります。脚の筋肉は第2の心臓といわれています。喫煙は血行を悪くするので、ここでも悪者です。
 現在はまだ治療の序の口で、治療が予定より長引いているのかどうか、まだわからない段階です。それぞれの骨折には、それぞれのドラマがあります。 気合いを入れてリハビリに専念しても骨髄炎になる人もいらっしゃれば、医師の注意を守らずに早めに勝手に歩いても、骨折が予想以上に障害なく順調に治る人もいらっしゃいます。バイクで転倒しなければこういった事態にならなかったわけですが、開放骨折したのは紛れもない事実ですから、あせらずに気長に治療しましょう。
 長々と返事を書きましたが、ちゃんと質問に答えているかな?「全荷重にしてもいいか?」というご質問ですが、まだ部分荷重(体重の半分ぐらいまで)にしておくのが無難でしょう。

(May/14/1998)

だいすけ [98年 10月 15日 (木) 12時 40分]

 以前(6月頃)下腿骨開放骨折の治療期間のことで質問させていただいた30歳男です。
 その時の「気長にがんばれ」とのアドバイスによって精神的に落ち着くことができ、おかげさまで現在では骨も9割方くっつき歩行をするには何ら問題ないレベルにまで回復しました。 今回は今後のリハビリの仕方について質問させていただきます。
 骨折の詳細は、オートバイでの転倒により右下腿部を開放骨折し、手術によって膝からプレートをいれて現在(術後6ヶ月)に至っています。 通っている病院では1ヶ月に一度レントゲンを取るだけで、リハビリについてはやってくれません。
 しかし、現在では日常生活においてほとんど痛みを感じることも無いので、「6ヶ月間ほっといていた筋肉を復活させるためのリハビリをそろそろ開始すべきなのでは」と思っています。 また膝関節が固くなってしまっているのでそのリハビリも必要になると思うのですが、それはプレートを外してからのほうが良いのでしょうか。現在は立て膝をつくとプレートの先端が干渉するのか、とても痛く正座が出来ない状態です。この2点のリハビリについてよきアドバイスをよろしくお願いします。

[tomos]

 下腿開放骨折が順調に治っていらっしゃるようで、一安心ですね。
 リハビリテーションについてのご質問ですが、「歩行をするのに何ら問題がないレベルまで回復」されたのであれば、すでにリハビリの第一の目標は達成されているといえるでしょう。これからは、どんどん歩けば脚の筋力もついてきます。
 「もっと筋力をつけたい」とのご希望であれば、スポーツジムで週に2〜3回マシンを利用して筋力をつけるのもいいと思います。なお、同じメニューを続けるのは飽きちゃうので、時々水泳やエアロビクス、バイクなどもされるといいでしょう。運動をしていると、自然に膝の可動域も改善すると期待されます。今はまだ正座ができないそうですが、膝関節を損傷していない下腿骨折の患者さんは、たいてい最終的に正座が可能になります。


(Oct/21/1998)


hirab [98年 5月 07日 (木) 14時 11分]

 はじめまして。31歳の会社員です。一月ほど前、ラグビーの試合中に左足首を骨折しました。何という骨かは、覚えていないのですが、足首の2本の骨のうち細い方の下端部を折り、太いほうの骨に亀裂が入っていました。
 手術をしたのですが、2つの骨が開いてしまっていると言うことで、2本の骨をボルトで固定し、折れた部分を針金で整復固定しています。抜糸もおわり、後はボルトを抜く手術を残すのみで、骨と傷口は順調に回復しているように思います。
 ただ、入院後半より現在まで、足の甲の外側半分に痛みが続いております。足の腫れから皮膚が引っ張られ痛いのかと考えていたのですが、大分腫れがひいても痛みがあります。ふくらはぎの外側の方をもむと、そこに「筋」が続いているらしく、ビリビリした感じが足まで伝わります。痛みの症状は、「普段は、触れると皮膚がビリビリ痛む」、「寝るときにしびれと痛みを感じる」といったものです。
 かかっている先生は、「腫れているから」ということでしたが、夜もなかなか眠ることができず、自分としてはかなり不安です。
 このままにしておいていいものなのか、いい薬は無いのか、どうなのでしょうか?宜しくお願い申しあげます。

[tomos]

 hirab さまの骨折した骨のうち細い方の骨は「腓骨」(ひこつ)という骨です。この腓骨の足関節の部分を「外果」(がいか)と呼んでいます。いわゆる「そとくるぶし」です。
 このあたりには「浅腓骨神経」という知覚神経が通っていますが、骨折時にこの神経に傷がいく場合があります。また、骨折の手術の時に、腫れや出血のためこの神経がわかりにくいことが多く、しばしばこの神経を手術の器具で圧迫したり、傷つけることがあります。ときには糸で縛ってしまうこともあります。この麻痺は tomos も何度か経験があります。
 hirab さまの症状は、この神経の症状だと推定されます。(あくまでも推定です。)
 神経が単に圧迫されただけの場合や、軽い傷の場合は1〜3ヶ月で症状がなくなります。もし神経の傷が深い場合や切断されている場合は痺れが残りますが、この神経は知覚に携わる神経なので、足が動かなくなるようなことはなく、日常生活に何ら障害を残しません。
 以上は、あくまでも推定の上でのお話です。直接診療なさっているのは主治医の先生であり、また手術時の状況は主治医にしかわかりませんので、こういった微妙な内容に関しては、hirab さまから主治医に詳しく症状をお話しして、主治医から直接説明を受けられるのがいいでしょう。

(May/8/1998)

W部 [98年 4月 11日 (土) 1時 22分]

 昨年1月に左腕の上腕骨を2カ所骨折し、手術をして肘と肩から棒状のものを2本いれています。現在もまだ骨折したところが完治していないらしくて、抜釘については「完全に骨がくっついてから」ということで、「7月くらいに抜釘をしましょう」と先生にいわれています。普段の生活には特に支障はありません(肘から棒がつきでてくるのではないかと時々心配ですが)が、腕があがりにくく、腕を自分の耳の横までもっていくことは今のところできません。自分では入れてある棒があたるような感覚があるため、これ以上は抜釘をした後でないと無理ではないかと思っていますが、このまま放っておくのはよくないのでしょうか。素人のあさはかさで、「抜釘の手術のときに麻酔がかかっている間に、グキッと先生が関節を柔らかくしてくれたらなあ」と思ったりしています。整形外科というよりはリハビリ系の質問で申し訳ないのですが、アドバイスをいただければと思います。

[tomos]

 上腕骨を2カ所も骨折する重傷にもかかわらず、肩と肘の両方から髄内釘による固定を受けられ、あと数ヶ月で抜釘できるところまで治ったそうで、まずは一安心ですね。
 腕があがらないのは、(1)ひどい外傷のため、(2)固定に用いたの髄内釘のため、(2)手術のあとの固定・安静のためなどが考えられますが、骨折の重症度からすればやむを得ないかもしれません。髄内釘が邪魔をしているのでしたら、抜釘後は肩関節の可動域(動く範囲)が多少改善するかもしれません。また全身麻酔で抜釘をする場合は、マニピュレ−ション(manipulation)といって、徒手的に肩の(おっしゃるように「グキッ」と)授動術(動きやすくすること)をすることがよくあります。ただし、まれには、この時に再骨折することがあります。
 残念ながら、多少の後遺障害が残りそうですが、ゴールまであと少しですね。リハビリ等、がんばってください。

(Apr/12/1998)

T.K [98年 3月 30日 (月) 21時 29分]

 はじめまして、わたしは27歳の会社員(男)です。3月の上旬に左上腕骨を骨折して、それまで全く興味のなかった医療関係のホームページを見ていて、こんな親切な先生もいるのかと驚きつつメールを書いています。
 骨折の原因は、「ブルワーカー」という油圧で負荷をかける細長いトレーニング機器を使って、胸の前でマシンの両端を持って両方から押す運動をしている時に、「バキッ」という音がして腕に力が入らなくなったので、病院にいくとやっぱり折れていたという情けないものです。
 「最初は手術をせずギプスで固定して様子を見て、結果次第で手術する可能性がある」と言われました(2/23のM.Hさんのメールにもあった通りです)が、経過はまずまず順調で、「この調子なら手術はしなくていいだろう」とのことです。
 前置きが長くなりましたが、tomos 先生に聞きたいのは、そんなに簡単に上腕骨が折れてしまうものなのか?もしそうでなく自分の骨が異常に弱い可能性があるのなら、その予防策を教えてもらいたいということです。
 骨折の原因を周りの人に言うと皆信じられないという反応をするし、担当の整形外科の先生にも「おもいきり腕相撲をやって骨折する人がたまにいるが、自分の力で上腕骨が折れるのは珍しい」と言われました。
 また、私は学生時代ずっと格闘技をやっていて今でも筋力トレーニングをしますが骨折したことはなく、「ブルワーカー」を使った運動も今回が初めてではありません。学生時代からずっと独り暮らしで、食生活が特に変化したというわけでもないのですが、このままではトレーニングを再開するのが不安です。完治した時点で一度骨密度の検査を受けようかと思っていますが、tomos 先生の診察経験をもとにアドバイスをいただきたいと思います。
 お忙しい中恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

[tomos]

 「ブルワーカー」で骨折したという話は聞いたことがありませんが、「ブルワーカー」に蓄えられたエネルギーが腕を捻る方向に開放されたとすれば、十分あり得る事だと思います。骨折が「らせん骨折(骨折線がらせん状)」もしくは「斜骨折(骨折線が斜め)」なら、おそらくそのような骨折のメカニズムだと思います。足関節や下腿の骨折も、足首を捻って生じることが多く、骨は「捻れ」には案外弱いようです。筋骨たくましい男性といえども、骨の捻れ剛性の限界を超える外力(自力?)を受ければ、骨折しても不思議ではありません。それにしても、自分で骨折するなんて、すごい力ですね。せっかくの筋力トレーニングが、文字通り「骨折り損のくたびれもうけ」になったわけですが、この際、しばらく「骨休め」をしましょう。
 tomos の個人的見解では、筋力トレーニングは、スポーツジムのマシンを利用するのが効果的で安全だと思います。インストラクターもいます。ただし、それなりの費用がかかります。
 骨密度検査に関してですが、もしご希望なら受けられたらいいと思います。ただし、仮に正常であったとしても油断は禁物です。骨密度が正常でも、大きな力を受ければ骨折します。反対に、骨密度が低値でも、転んだりしないように注意すれば、骨折を予防できます。
 なお、骨を丈夫にする食事はいろいろ言われていますが、tomos は自分の好みから「納豆」をお勧めします。「納豆」には、骨を丈夫にするビタミンKが多く含まれています。「納豆」を食べて粘りのある骨にしましょう。

(Mar/31/1998)

Ryo [98年 3月 13日 (金) 15時 01分]

 はじめましてです!
 早速ですが質問。「肋骨のひびは処置出来ないのでしょうか?」自然に任せて治すしかないと聞くのですが。答えを待っています。

[tomos]

 肋骨のひび程度の骨折・数本までの肋骨骨折は、湿布を貼るぐらいで経過を見るだけで治ります。ただ、体を動かす時や呼吸や咳をする時に痛むようなら、さらしや腹巻きのようなバンドを胸部に巻いてやると痛みが和らぎます。たいてい1ヶ月もすれば痛みが軽減します。
 しばしば肋骨骨折のために胸に血が貯まったり、肺がしぼんだりする場合があります。また、肋骨が多数にわたりボキボキに折れ、呼吸ができない場合があります。こういうケースでは、病院で(多くの場合入院が必要です)適切な治療が必要です。

(Mar/14/1998)

M.H [98年 2月 23日 (月) 5時 18分]

 はじめまして、23歳(男)です。去年の正月にオートバイで事故を起こしてしまって、左上腕骨(複雑)骨折してしまいました。「通常、上腕骨骨折の場合九分九厘手術」と当初主治医に言われましたが、骨折の状態が良いので上半身をすべて覆うギブスで保存治療をすることになりました。しかし、二ヶ月たった時点で骨折部がうまく接合せず、結局手術をすることになりました。手術は腸骨から患部に骨移植をしてプレート固定をしました。
 この場合、最初から手術をすればもっと治りが早かったように思いますが、どうなんでしょうか?
 あと「上腕の場合、近くに神経が数多く通っているので危険なので抜釘はしない」と聞きましたが、どうなんでしょうか?また、どれぐらいリスクがあるのでしょうか?あと抜かない場合は、通常どうりに生活できるのでしょうか?
 アドバイスお願いします。

[tomos]

難題をありがとうございました。

(1)手術か保存的治療か

この選択は、整形外科に限らず外科系の診療科の究極のテーマです。(以下の説明は骨折の治療の場合です)

(A)手術をせずに治るのであれば、保存的治療がベストだと思います。

(B)手術をしなければ治らない場合は、患者の同意があり、他に問題がなければ手術がベストだと思います。

(C)手術でも保存的治療でもどちらでも治る場合は、微妙な判断になります。
(C−1)手術でも保存的でも成績に大差がない場合は、保存的治療を選択するのがベストだと思います。
(C−2)手術の方が「後遺障害がより少ない」、「治療期間が短い」などのメリットがある場合は、患者の同意があり、他に問題がなければ手術を選択する場合があります。

(D)手術でも保存的でも治療が難しい場合は、私どもを悩ませます。こういった場合、私どもはまず治療のゴールを設定し、そこへたどり着くまでの筋道を練ります。たとえば、1回の治療で治そうとせず、最初から数回の治療(手術など)を計画することがあります。

 M.H様のケースでは、骨折のレントゲン写真を拝見していないのでお返事に苦慮いたしますが、「複雑」骨折とのことですから、まず始めに(D)のケースであったと仮定させていただきます。M.H様の場合、骨折があまりにバラバラであったので1回の手術で治すことは難しく、ギプスによる保存的治療でまず大まかな骨折の骨癒合を(あわよくば全ての骨折が癒合することを)おそらく期待したのでしょう。2ヶ月後、手術(骨移植とプレート固定)で治せる状態になったので手術に踏みきり、最終的に骨癒合が得られたと考えるのが自然です。tomos もよくそういった治療法を選択します。

 次に(C)のケースであったとします。保存的治療で治るのでしたら、体にメスを入れずにすむのですから、それに越したことはありません。M.H様の場合、保存的治療を選択したけれども、結果的に骨癒合が得られず、手術を必要としたようです。しかし、最初に手術を選択していても骨癒合が得られず、再手術を余儀なくされることもしばしば経験します。あとになって「もっと良い治療法があったのでは」と思うのは、結果論であって、医療は生身の人間という不確実な対象を扱っているため、最初の期待通りにいかないことが少なからずあります。

(2)抜釘するかしないか
 最近はチタン製のプレートなどもあり、これらは生体への影響も少なく、抜釘をしないのも一つの選択です。抜釘しなくても、たいてい問題はありません。
 しかし、異物には違いありませんから、患者の強い希望があれば抜釘も不可能ではありません。上腕骨の近傍には神経、特に橈骨神経があり、手術後に神経麻痺を生じることがあるのも事実ですが、注意深い手術を行えば、神経麻痺の起こる確率を減少させることはできます。
 抜釘をするかしないか、これも選択の問題です。

(Feb/23/1998)

E.K. [98年 2月 14日 (土) 21時 04分]

 はじめまして。こんな親切なお医者さんが居るとは感激しています。(エヘヘ by tomos)
 先日骨折の抜釘手術をしました。しょうもない質問で大変申し訳ないのですが、教えて下さい。抜糸前には、お酒は飲まない方がいいのでしょうか。素人考えでは、アルコールで血行がよくなると傷にもさわるのかな、という気がしますが。お忙しい中、くだらない質問ですが、お願いします。

[tomos]

 手術後の飲酒については、患者様からよく質問を受けます。
アルコールには血管拡張作用があり、手術直後に飲酒すると、場合によっては多少出血が多い、傷口がはれて痛いなどの弊害があるかもしれません。
 また、血管が弱い・出血しやすいなどの病気のある方は、抜糸が終わる頃までアルコールは控えるべきです。
 健康な方でも、手術当日は飲酒しない方がいいでしょう。手術翌日からは、缶ビール1本(350ml)程度ならいいかな...と思いますが。酒に酔うと転倒の危険もありますから、抜糸の頃までは、飲酒はほどほどになさってください。
 お酒の飲み方ですが(よけいなお世話かもしれませんが)、一般的に習慣的な飲酒は肝臓に良くないですから、休肝日を設けて隔日ぐらいに適量を飲むのが良い飲み方です。
 なお、入院中の患者様の場合は、飲酒できない規則になっています。

(Feb/15/1998)

受験生の母 [98年 2月 08日 (日) 18時 05分]

 初めまして。娘(15歳)の手首の骨折についてご相談したいのですが、宜しくお願い致します。
 先日3日に自転車で走行中に転倒した際、右手を地面についたらしく手首を押さえて帰宅したので、近くの病院に連れて行きレントゲン検査をしました。その結果、手根骨及び舟状骨周辺の単純骨折と診断され、ギプスを約1ヶ月する羽目になり、追い込みの勉強も手に付かないようです。
 娘は高校受験勉強中の突然のアクシデントで、試験(3月中旬)までにギプスがとれるか心配で落ち込んでいます。又早く治す方法はないものでしょうか?良きアドバイスを宜しくお願い致します。

[tomos]

 受験、就職、結婚.....人生の大事なイベントを前にケガや病気に見舞われる患者様を、tomos もしばしば経験します。
 電子メールでお聞きしたところ、幸い幼少時は左利きだったそうで、左手でも何とか字が書けるのが不幸中の幸いです(受験勉強はできる!)。
 手の舟状骨は手の親指側の付け根にある骨で、転倒して手をついた時などによく骨折します。舟状骨の特徴はその骨の(表面がまわりの骨と接する)関節面の割合が大きいことです。そのため舟状骨は、それを養う血管の流入部位が限られ、折れ方によっては、折れた片側の骨には血が通わないという事があります。その結果、骨折が治りにくかったり、骨が壊死(えし、腐ること)になったりすることがあります。また、舟状骨骨折はレントゲン検査でもよくわからないことがあり、しばしば見逃されます。以上のような理由で、整形外科医の間では、舟状骨骨折は治りにくいので有名です。
 成人の舟状骨骨折の新鮮例の場合、ギプス固定は6〜8週間、あるいはそれ以上実施しています。tomos は、ギプス固定を前腕〜母指まで6週間行い、その後は手関節装具(Don-Joy,elastic wrist splint)を数週間装着しています。ドクターによっては、骨折部をより安静に保つため、肘の上までギプスで固定しています。
 舟状骨の折れ方によっては、手術(ネジで固定したりする)を選択することがあり、また偽関節(骨がつながらないまま長時間経過した症例)には種々の手術法があります。
 舟状骨を骨折した受験生、受験も大事なら手も大事.....。残念ながら、早く治す方法はありませんが、tomos なら15歳の若い患者様には、4〜5週間のギプス固定を行うでしょうか。ギプスがはずれる頃にちょうど受験ですが、念のためその後もしばらく手関節装具をつけていただくかもしれません。この装具でしたら字も書けます。
 最後になりましたが、骨折にめげずに、受験がんばってください。

(Feb/10/1998)


T.I [98年 2月 05日 (木) 0時 10分]

 tomos 先生、初めまして。妻の怪我についてお伺いいたします。先月24日にバイクで走行中に転倒し、右膝蓋骨骨折、靱帯損傷という大怪我を負ってしまい、病院では全治6ヶ月と診断されました。現在、太ももからつま先までギプスを巻いていますが、とれるまでどの位かかりそうでしょうか。(主治医はハッキリとした返事をしてくれません。妻を見ていると辛そうなので…。)
 妻は生まれて初めての大怪我で困惑しています。現在は入院していますが、来週にも自宅療養ということで退院できるとのことですが…。自宅療養での注意点などありましたら、宜しくお願い致します。

[tomos]

 電子メールでお伺いしたところ、膝蓋骨は完全に骨折し少しずれていて、膝の靱帯は合計4本あるうち、前十字靱帯と外側側副靱帯の2本を損傷していらっしゃるとのことでした(関節鏡検査を実施済み)。
 まず、膝蓋骨骨折についてですが、この骨は血流が良く比較的治りやすい骨です。ギプスで治すということですから、骨折の転位(ずれ)も大きくないのでしょう。レントゲンを拝見していないので明言できませんが、tomos ならギプスを4〜6週間巻くでしょうか。なお、骨折が膝蓋骨の関節面(表面が軟骨で覆われた大腿骨とこすれる面)にかかっている場合は、多少の関節の症状(屈伸時の痛みなど)が残る場合があります。
 奥様の場合は、問題は靱帯損傷の方で、あとあと障害が残る可能性があります。関節鏡検査の時に簡単な手術もなさったとのことで、おそらく半月板損傷を合併していて、半月板損傷部の部分切除術を受けられたのでしょう。膝関節の Q&A の中に、前十字靱帯損傷と半月板損傷の合併症例について詳しく説明しましたので、そちらを参照してください。(外側側副靱帯損傷は前十字靱帯の再建と同時に治療します。)
 自宅療養中の注意点ですが、ギプスで固定しているときも、太ももやふくらはぎの筋肉が衰えないように、筋肉に力を入れる練習をしておきましょう。

(Feb/8/1998)


栃木県のK.S [98年 1月 28日 (水) 8時 28分]

 43才の男性です。一般的に、骨折が治癒するまでの日数とピンを抜く期日について教えてください。(一般的な場合で結構です)
 今年の1月4日に鎖骨骨折をし地元の整形外科に入院。ピン2本で固定しました。入院10日目抜糸しましたが、ピンの1本が肩より約5ミリ程突出17日めに再度打ち込みをしました。26日退院をしました。経過は順調のようです。

[tomos]

 栃木県のK.S様、当ボード初のご相談、ありがとうございました。無事退院され、ほっとしていらっしゃると思いますが、まだ無理をなさらずにどうかお大事になさって下さい。以下、多少なりともご参考になればと思います。
 鎖骨ぐらいの大きさ骨の場合、その骨折の骨癒合が得られるまでの期間は、小児の場合は数週の単位の場合が多いですが、成人の場合はやはり数ヶ月の単位となるようです。もっと大きな骨の開放骨折(骨がむき出しの骨折)や粉砕骨折(粉々な骨折)の場合、数回の手術を要し、骨癒合が得られるまで1〜2年かかることもあります。
 当院には、過去5年間におそらく100例を下らない鎖骨骨折の患者様が来院されていると思います。小児の場合や、成人でも骨癒合が得られやすい折れ方の場合は、ギプス固定・鎖骨バンド固定を行い、通院で鎖骨骨折を治療しています。手元のデータによると、当院で過去5年間に鎖骨骨折で入院された方は27名、そのうち手術をした方は14名いらっしゃいました。そのうち7名が経皮的鋼線固定(ピンニング)術−骨折部を切開しない手術−を行い、抜釘まで平均4.8ヶ月(1.5〜8.5ヶ月)要しています。残り7名は骨折観血的手術−骨折部を切開する手術−を行い、抜釘まで平均5.6ヶ月(4.5〜7.5ヶ月)要しています。一般的に手術後2〜3ヶ月もすればレントゲン上で骨がつながったと判断できる場合が多いのですが、抜釘は「もう少し骨がしっかりしてから」とか患者様の都合でさらに数ヶ月後になるようです。人の骨は常に新陳代謝されていますが、新しい骨に置き代わるまでは、さらに2〜3年を要します。
 鎖骨骨折は鋼線で固定することが多いのですが、手術後しばらくして腫れがおさまったりすると鋼線の端が突出し、痛んだり化膿したりすることがしばしばあります。その時は、それを打ち込んだり切ったりしています。

(Jan/28/1998)


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